はじめしゃちょーが明かす“一周”したからこそ生まれた価値観 「自分は動画が1番楽しい」
2023年12月13日、日本での開催が10周年を迎えた『YouTube Fanfest Japan 2023(以降、YTFF)』に、不動の人気を誇るはじめしゃちょーが出演。ステージではYTFF10周年にかけて、はじめしゃちょーの人気コンテンツ「骨エンド(10年経つと人が骨になる)」ネタを披露し、会場を沸かせた。 【写真】はじめしゃちょーの撮り下ろしカット そんなはじめしゃちょーに、YTFFの出演にあわせインタビューを実施。YTFF出演への思いやクリエイターとYouTubeの変化、コンテンツ制作について話を聞いた。 ・“実力がないと数字が取れないので怖かった” 「コラボ禁止」の1年を振り返る ーー近年は、コロナ禍でオンライン開催や小規模な会場でのYTFFの開催が続いていました。今年の大規模な会場での開催に関して、どのように感じていらっしゃいますか? はじめしゃちょー:動画クリエイターは室内や自宅で撮影される方が多いので、あんまり関係ないんじゃないかと思いつつも、人を集める企画やリアルイベントの機会はかなり減っていたので、やっといろんなことが制限なく活動できるようになったのかなと、会場の規模、お客さんの顔を見て思いました。 ーーYTFFは今年で10周年ということですが、はじめしゃちょーさんは2015年から参加されていますよね。毎年参加するなかで、2015年当時と現在を比べて、どのような変化を感じていらっしゃいますか? 人気を博しているクリエイターのタイプや種類が変わっているといった変化はあるのでしょうか。 はじめしゃちょー:僕の目線からすると、そもそもクリエイターの数や人気クリエイターの数がすごい増えたなと思います。どんどん新しい世代のクリエイターが出てきて、視聴者層が移り変わるというわけではないですけど、旬のクリエイターが毎年変わっていっているなという印象があります。 ーーいまが旬だと感じる方はいらっしゃいますか? はじめしゃちょー:まさに今回のステージの出番で、僕は間に挟まれていたんですけど、平成フラミンゴさんとコムドットさん。「ああ、なんで挟まれてるんだろうな」と思っていました(笑)。 ーーそれは不動のトップランナーを走っているはじめしゃちょーさんだから任せられる出演順ですね。今年はヒカキンさんを除くクリエイターの方々とのコラボを禁止する縛りを行っていたと、先日の動画で発表されていました。コラボが数字を伸ばすための最適解とされているなかで、画期的な取り組みだと感じました。今日はYTFFでひさびさに多くのクリエイターの方々と対面したと思いますが、なにか感じたことはありますか? はじめしゃちょー:ありがたいことに、仲のいいクリエイターさんがたくさんいるので、懐かしかったというか、久々に会えて嬉しかったです。クリエイターがすごく増えているなかで、コラボもすごく盛んになっているんですけど、そこで色とか個性を出す作戦として、コラボしないというのはたしかに画期的なのかもしれないです。ですけど、自分に実力がないと数字が取れなくなっちゃうので、怖かったですね。 ーー4億円の豪邸を定期的にアップデートされていたり、活動休止になってしまいましたが、「はじめしゃちょーの畑」チャンネルのメンバーを動画に出して、一人だけの画にならないように工夫されていたような感じがしました。そういった画変わりがあったから視聴者の方も飽きずに、人気を保持できたんじゃないかと考えていますが、実際、意識的に一人にならないようにと考えていたのでしょうか。 はじめしゃちょー:むしろ一人になろうと思ってやっていました。いろんなジャンルのクリエイターをみると、一人でやっている人の方が珍しいので、一人でやりつつも、周りの人の力を借りたり、お家を改造したりしていました。 狙ってではないですけど、11年もやっていると、同じことの繰り返しというわけにはいかないので、無意識というか、変化して当たり前だと思いつつやっていたんだと思います。 ーー経験則から分かる感覚といったところでしょうか。 はじめしゃちょー:そうですね。変化しないと数字を維持できないみたいな感じがあるので。 ーー淘汰されていってしまう厳しい世界ではありますよね。ここ10年、YTFFに出演されてきて、イベントのお仕事もだいぶ増加したと思います。動画一本でやってきた時と比べ、イベントを通じて自分の成長を感じることはありますか? はじめしゃちょー:イベントに出る機会はあるんですけど、そんなに自分に自信がないし、人前に出るのは得意じゃないので、意図的にイベントの出演を抑えるようにしているんです。 ーーだからこそYouTubeという場所を選んで、自分でプロデュースできるようになったんですね。 はじめしゃちょー:イベントよりも動画を観てほしいし、動画の方が盛り上がってほしいので、イベントは極力絞っているんです。でも、出演するイベントは、来てくださった方に満足していただけるように、なにかしらの努力というわけではないですけど、ちゃんとしようと心がけています。「イベント出まくるぜ」みたいな感覚じゃなく、どちらかというと映像で魅せたいなという気持ちですね。 ・“息の長い活動のコツ”は「良くも悪くもプロ意識を低く」 ーーそれこそちょうど1年前、メインチャンネルに投稿された動画制作に関する“叫び”は、動画クリエイターとしての矜恃を感じました。あくまで自分の根底は動画クリエイターであるというプライドを持っている方、そこまでプライドを持ちきれる方は少数だと思うのですが、その辺りはどのように思われていますか? はじめしゃちょー:多分、一周したんだと思います。動画以外のお仕事もいただいて、テレビとかいろいろやらせていただいた結果、やっぱり自分は動画が1番楽しいんです。UUUMには自分のチャンネルの動画をファーストに考えていただけるようにサポートしていただいているので、来年も引き続き、同じような感じで活動できると嬉しいなと思っています。 ーー真摯な姿勢が視聴者の方にも伝わっているんじゃないでしょうか。動画クリエイターが動画で魅せていくというのは、ある種の極地かもしれません。 はじめしゃちょー:いや、わがままですよ。人によると思うんですけど、僕は完全に動画を作っていたいだけの人間なので。 ーーすごくカッコいい話をありがとうございます。はじめしゃちょーさんは今年でYouTubeを始めて11年目ですが、活動を長く続けていくための秘訣はありますか? はじめしゃちょー:僕はYouTubeは仕事と思わないようにしていますね。仕事と思うと、「すごい長時間働いてるな」と思っちゃう。撮影以外の編集や頭を使っている時間とかも仕事と捉えると、きついと思っちゃうので、良くも悪くもプロ意識を低く持つというのが、YouTubeでの活動を長く続けていく秘訣かなと思います。 ーー「仕事を楽しんでいる人には勝てない」みたいな理論に近いですかね。 はじめしゃちょー:そうですね。かといって、それだけだとやっていけないので、ある程度、目標を決めたり、頑張らなきゃいけないところもあると思うんですけど。綺麗事をいっているみたいですが、根本は楽しむっていう気持ちを持ち続けることかなと思います。 ・はじめしゃちょー流の“ショート動画の作り方” ーー最近はテレビのモニターにYouTubeを写して、大画面で動画を観る方も多いですよね。それに対してはじめしゃちょーさんのチャンネルで取り組んでることや意識していることはありますか? はじめしゃちょー:テレビで観てる人が多いと聞いてから、長尺動画というか、長めの動画を出すようになりました。初期の頃は2分とか3分とかでしたけど、最近、長いものだと1時間近くある動画を出したりとか。多分、テレビで観ている人もいるんだという意識がどこかであるのかなと思います。 ーーYouTubeクリエイターという言葉がまだなくて、“動画投稿系男子”と言われていた時代からYouTubeを観ていると、尺が長くなったなと感じます。 はじめしゃちょー:当時の動画はめっちゃ短かったですよね。そのテンポ感も好きなんですが、それはYouTube ショートで1分以内のものを出せば、そこの需要には応えられるのかなと。割り切って、じっくり観られる動画と短い時間で観られる動画で分けていくと、観やすくなるのかなと思っています。 ーーはじめしゃちょーさんの「開封の舞」とかは、YouTube ショートっぽい感じがします。 はじめしゃちょー:パッとクイックに見られる感じはそうですね。 ーーやっぱり良きものは廃れないというか、いつでも通じるんですね。 はじめしゃちょー:テンポのいい動画というのは形を変えて、1分以内の縦動画で引き継がれていくんだと思います。 ーーはじめしゃちょーさんのチャンネルでは、骨格標本を使った「骨エンド」動画や畑の皆さんと出ている短尺動画がありますが、YouTube ショートの制作には意識的に取り組んでいるんでしょうか? はじめしゃちょー:もともとそういう短い尺の動画をずっと出していたので、楽しいです。自分のスタイルに合っている動画の尺と出し方なのかなと感じています。 ーー長尺動画は長く撮影して、そこから面白いシーンを抽出していくというイメージですが、短尺動画だと台本を決めて、そこから逆算して撮っていくという方法になるのでしょうか。 はじめしゃちょー:決め切って撮るものもあれば、ミニゲームみたいなものをやるだけとか、撮り方はいろいろありますね。YouTube ショートの場合は、なるべく短く、楽しく撮れればいいので。 ーーYouTube ショートは、はじめしゃちょーさんの真骨頂が垣間見えるコンテンツですよね。古参の視聴者としては、レオパレス時代が懐かしいです。 はじめしゃちょー:いま、そのレオパレスが恋しくて、家の一室をレオパレスっぽくしようというのを考えています。広くて、まだまだ色んな使い方ができるので。 ーー初期ファンは震えると思います。楽しみにしています。それでは最後に、はじめしゃちょーさんにとってYouTubeとはどういった存在でしょうか。 はじめしゃちょー:難しい質問ですけど、仕事だと思っていないあたりはなにでしょう。頑張るときは頑張るので、遊び場っていうわけでもないんですが、まあ、人生ですかね。
丹治健太、せきぐちゆみ