弾けるスペインの泡、カヴァの世界へ③ 世界3大スパークリングワインの一つ「カヴァ」、その品種や歴史、そして魅力は? 格付け最高位のブドウ畑を訪ねた
高級ブランデーの蒸留からカヴァ造りに転進
「ジロ・リボ」はサンタ・フェ・デル・ペネデス(サン・サドゥルニ・ダノイアの南西)に拠点を構えるボデガ。フランス、コニャックの老舗「レミーマルタン」と縁があり、蒸留酒を造っていた時代もあったが、80年代にカヴァを主体に高品質ワインを造る方向に大きく舵(かじ)を切った。巧みな品種構成、熟成樽(だる)の使い分けなど、細部にこだわった造り。低温浸漬(しんし、注②)から始める丁寧な醸造で、カヴァはいずれもピュアでデリケートな味わいとなっている。 「ウマ ブルット グラン・レセルバ 2020」(3300円前後、価格はネットショップでの実勢価格)は、ピノノワール、チャレロ、シャルドネのブレンド。澱引き前の熟成期間は50カ月。乾いた小麦を思わせる酵母香に焼き栗、洋梨の果皮のような香りが混じる。ウマ(UMa)はおおぐま座のこと。宇宙の闇を思わせるブルーのボトルのイメージそのものの、神秘的な味わい。 「アンプラグド・ロゼ ブルット レセルバ 2019」(4400円前後)は、ピノノワールを主体にシャルドネをブレンド。一部のベースワインの熟成にアカシアの樽を使うことで、フローラルな香りを強調している。ロゼと言うよりもオロ(黄金)と呼びたいような高貴な色合い。桜桃や白い花の香り。口に含むと梅ジュースのような風味がする。「アンプラグド」とは、エレキギターではなく、アンプに繋がないアコースティックギターで演奏すること。気取らずに楽しみたい。
格付け最高位のブドウ畑を擁する海沿いの造り手
ここまでモンセラートの南に広がる盆地のペネデス地区のボデガを紹介してきたが、最後に登場する「アルタ・アレーリャ」はバルセロナに近い沿岸の地、アレーリャにある。気候(海風が吹き、寒暖差は小さい)も土壌(砂地に花崗岩〈かこうがん〉が混じる)もペネデスとは異なり、当然カヴァのスタイルも違ってくる。アレーリャのカヴァは味わいまろやかで塩のミネラルを感じさせる。 ベルモットで有名なイタリアの「マルティーニ・エ・ロッシ」でスパークリングワインの製造を担当していたジョゼップ・マリア・プジョル=ブスケッツ氏がこの地にボデガを構え、最初のワインをリリースしたのは2001年。畑では最初から有機栽培を実践。この地方でパンサ・ブランカと呼ばれるチャレロとシャルドネを主体に、ガストロノミーのテーブルにふさわしい優美で瑞々(みずみず)しいカヴァを造る。6社10区画しか認定されていないカヴァの最高位の格付け、「パラヘ・カリフィカード」に認定された区画を持つ生産者でもある。 「ミルジン・オプス パラヘ・カリフィカード ヴァルシレラ ブルット・ナチューレ 2019」(38ユーロ/日本未輸入)は、パンサ・ブランカ60%、シャルドネ40%。澱引き前の熟成期間は36カ月。熟れた洋ナシ、リンゴ、アーモンド、バニラの香りに白檀(びゃくだん)のようなトーンが混じる。うま味を伴った余韻が長く続く。 「ライエタ グラン・レセルバ ブルット・ナチューレ ロゼ 2017」(25.50ユーロ/日本未輸入)は、マタロ(モナストレル)100%。淡いサーモンピンクの風雅な色合い。スミレの花と赤い果実の香りにドライフラワーのトーンが混じる。口に含むと、泡の奥からトマトのような風味が覗(のぞ)き、食欲を催させる。 【注】 ① Bコープ認証 アメリカの非営利団体B Labによる国際認証制度で、環境や社会に配慮し公益性において高い評価を得た企業に与えられる。 ② 低温浸漬 収穫後破砕したブドウを一定時間8℃以下の低温で果汁の中に浸すことで、ゆっくりと発酵をスタートさせる製法。香りが華やかになる、味わいが複雑みを増す等のメリットがある。 【ワインに関する問い合わせ先】 ヴァルフォルモサ 輸入元:東酒類株式会社 ジロ・リボ 輸入元:ミリオン商事株式会社 アルタ・アレーリャ 輸入元:株式会社ラヴニール ※記事で取り上げた2アイテムは未輸入(2024年12月時点) (文・写真 浮田泰幸 / 朝日新聞デジタル「&Travel」)
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