【インド】清酒の現地生産、福岡・高橋商店が試験実施
「繁桝(しげます)」で知られる日本酒メーカーの高橋商店(福岡県八女市)が、インドの首都ニューデリーの民家で、清酒の試験生産を始めた。試験生産に使うインディカ米や水、酵母、乳酸など原材料はインドで調達した。 試験生産は、高橋商店の前杜氏(とうじ)、山科博昭企画室長と、現地でワイン製造会社を経営するインド人2人の計3人が協力し、5日に開始。5日はコメの購入や洗米、浸漬(しんせき)、6日はコメを蒸した後、蒸米にこうじ菌を繁殖させるこうじ造りを実施した。数日以内に仕込みを始め、蒸米(8キロ)、水(17リットル)、こうじ(3キロ)、酵母、乳酸をタンクで混ぜて酵母を増殖。15日ごろに酒母(酵母を増やした液体)の状態で搾りを行う。 原材料に加え、醸造に必要な蒸し器やタンクは、インド人2人の協力を得て、現地で入手した。今回は、こうじ菌がしっかり繁殖するかや発酵がきちんと進むかなど、本格的な現地生産に向けた試験が主な目的で、搾ったアルコールは販売しない。高橋商店の山科室長は「本格的な現地生産に数年でこぎ着け、清酒をインドで醸造する最初の日本企業になりたい」と話した。同商店は今後、試験結果を踏まえ、テストに協力してもらったワインメーカーとの協業を模索する。 インド国内の清酒事情に詳しい関係者によると、これまでも地場業者が国内で、清酒を試験生産したり、輸入した日本酒を瓶詰め後に商業販売したりした事例はあるものの、日本企業が清酒をインドで試験生産するのは今回が初めて。高橋商店は2月、日本酒メーカーとして初のインド法人を設立した。インド法人が日本酒を日本からインドに輸入したり、インドで卸売り販売する計画に加え、将来的には清酒を現地生産する考えを示していた。 日本からインドへの輸入関税率は、ビールが100%、日本酒を含むその他のアルコール飲料が150%になっており、清酒の現地生産を実現すれば、各メーカーはインドで販売価格を抑えることができる。清酒の現地生産は近年、旭酒造(山口県岩国市)による米国やスタートアップのWAKAZE(ワカゼ、東京都世田谷区)によるフランスの事例など、世界各国で広がり始めている。