実はアップルが「圧倒的優位」に立っている分野、EV撤退、AI開発出遅れでも撒いている種
■AI関連の人材採用には積極的だった そもそもアップルは1990年頃から、AI関連の人材の採用に積極的だった。SGI、マイクロソフト、グーグルと渡り歩いたAIの第一人者、カイフ・リーも最初に勤めたはアップルだった(1990~1996年)。 AIは2006年以降、ビッグデーターとディープラーニングという技術の登場で、飛躍的な進化を遂げ第3次AIブームと呼ばれる時代に入ったが、そうなって以降もアップルは積極的にAIの研究者を雇い続けている。
ただし、研究成果の公開など情報の扱いについての制約が多い社風が研究者に馴染まないのか、すぐに辞めてしまう研究者も多い。2016年から3年強在籍して自動運転を含むAI研究部門のディレクターを務めた後に退社したルスラン・サラクトゥディノフ(Ruslan Salakhutdinov)もその1人だ。 しかし、アップルがAI研究についてまったく成果を出していないわけではない。アップルは研究者/開発者向けに画像編集用のAI「MGIE」、静止画に動きをつける「Keyframer」、さらにいくつかのAI機能がまとめられた開発者向けライブラリー(開発に用いる素材)の「MLX」をすでに公開している。一般ユーザー向けではなく開発者や研究者向けだが、それぞれ一定の評価を得ている。
アップルにとってAI開発の足枷になっているのが、ユーザーを第1に考えた高品質な製品を提供するという同社のブランド戦略だ。ユーザーのプライバシー保護を何よりも重視するスタンスを掲げている同社としては他社のように自由にユーザーが蓄積した情報を学習させることはできないし、平気で虚偽の情報が混ざるChatGPTのような生成AIサービスも提供しづらい側面がある。 先に述べたiPhoneで提供済みのAI技術が、堅実かつ控えめな活用にとどまっているのもこうした理由からだ。
とはいえ、世の中がこれだけ生成AIで盛り上がってくるとアップルとしても、これをいつまでも無視し続けるわけにもいかない。最近、アップルが開発者向けに提供している開発途上のiOSにSiriSummarizerという機能の搭載を試みている痕跡が発見されている。アップルの音声アシスタント機能のSiriを用いて記事などの情報の要約を返す機能のようで文章の生成にはChatGPTを用いているという。 グーグルの大規模言語モデル「FLAN-T5」やアップルが独自に開発しており「AppleGPT」と呼ばれることもある「Ajax」という大規模言語モデルを試している痕跡もあるようだが、一方でアップルがOpenAIやグーグルと両社の大規模言語モデルの利用について話し合いを始めているとアメリカメディアは報じている。