村田諒太に勝った38歳元プロ佐藤幸治がRSC負けで東京五輪の夢絶たれる「挑戦できたことが幸せだった」
アマチュアボクシングの東京五輪予選出場選手を決める全日本選手権の第2日が22日、鹿児島・阿久根市総合体育館で行われ、16年ぶりに出場した元東洋太平洋ミドル級王者の佐藤幸治(38、日大)が75キロ級(ミドル)の準々決勝で大会2連覇中の森脇唯人(23、自衛隊体育学校)に3回19秒RSC(レフェリーストップコンテスト)で敗れた。“山根スキャンダル”で元プロのアマ復帰が解禁されたことで、アマ時代のWBA世界ミドル級王者、村田諒太(33、帝拳)に勝ち、世界挑戦経験もある佐藤は7年ぶりに現役復帰したが目標に掲げていた東京五輪出場は叶わなかった。
15歳下の森脇のスピードとステップに翻弄された
カウンターの左フックをモロに浴びると尻餅をついた。 「すぐ立ち上がったんですが……」 3ラウンド、19秒、レフェリーは、そこで試合をストップした。 コーナーに戻り腫れた右目を触り上を向いた佐藤幸治は泣いているように見えた。 「オリンピックに行くと決めていたんで…こんな結果になるとは思わなかった。ここで負けたら普通のボクサー。ここで勝ってこそ佐藤幸治なんです」 全日本2連覇中。代表に選ばれた世界選手権は怪我で戦えなかったが、優勝の大本命だった23歳の森脇は、喜びの感情は見せず静かにその背中に向かってお辞儀をしていた。 前日の1回戦は、全盛期の佐藤をほうふつさせるような強烈な右ストレートでダウンを奪い、この日の準々決勝に進んでいた。 38歳、丸7年のブランク……4日間の大会を戦う体力に不安があった佐藤にしてみれば、「優勝するためには絶対に勝たねばならない相手」としてマークしていた森脇と、まだ体力を十分に温存していた大会2日目に対戦できることはラッキーだった。 「東京五輪はオレのためにある」とポジティブに考えたが、1ラウンドに誤算があった。森脇は、スピードとリズミカルなステップワークで翻弄してきた。でも決して無理はしてこない。 「ジャブをちょこちょこ。右を狙ってくる」と、森脇を分析していた佐藤は、その右に右を合わせる作戦だったが「思ったよりもガードも低くジャブも当たったので、そのことを忘れてしまった」という。 2ラウンド。森脇は佐藤の動きを見切ったのだろう。左を上下に散らして、フロイド・メイウェザーばりのスウエーで、佐藤のパンチに空を切らせ、ペースを握り左フックをパンと合わせた。佐藤は、一瞬、少しバランスを崩しただけだったが、これをダウンと認定された。「え?これで?」。 1ラウンドも手数の違いでポイントを取られていることを自覚していた佐藤は焦った。前に出るが、一発逆転を狙ったパンチは、つい大振りになった。その隙に左を的確に当てられ、今度はワンツーをヒットされた。佐藤の動きが止まると2度目のダウン認定。 最終の3ラウンド。崖っぷちに追い込まれた佐藤は、いちかばちかの勝負を仕掛けたが、最後まで冷静な森脇の返り討ちにあった。 「アマで最初で最後のダウンになりました。左フックは効きましたね。トータルで全然ダメでした。思ったより森脇君との差がありました。経験値を生かして、例えば、ガードを完璧に固めて前へいって接近戦で足を止めるとか、やりようもあったはずなんですが、同じ土俵で戦ってしまった。いろんなものが不足していた。やっぱり時間が足りなかったですね」