「100年フード」認定のカモ飛来地の食文化 「RED U-35」上位表彰の若手シェフ6人が考案した新料理でPR
◆「飲食店向け」「イベント向け」「家庭向け」の3分野で計11メニュー
カモの飛来地として、江戸時代から伝統的な食文化が根付いている福岡県小郡市を広く発信しようと、全国最大級の料理コンテスト「RED U-35」で優秀な成績を残した若手シェフら6人に地元が依頼していた新作カモ料理が完成した。カモ肉に加えて、地元産の野菜や果物を使い、お手軽なファストフードからフランス料理のメインディッシュまで「飲食店向け」「イベント向け」「家庭向け」の3分野で計11メニューが誕生。ネット上でレシピを公開しており、市内外の食関連イベントでアピールしていく。 【写真】新作のカモ料理 企画したのは、飲食店情報サイトの運営企業「ぐるなび」(東京)社員で、総務省の「地域活性化起業人制度」で昨年4月から市商工観光課に派遣されていた大住由季子さん。小郡のカモを取り巻く食文化が2022年に文化庁の「100年フード」に認定されたのを踏まえて新作料理を発案。同庁が公募した「食でつながる日本の文化認定事業」に採択され、市と市観光協会が共同で取り組んだ。 「RED U-35」は、ぐるなびが35歳以下の料理人を対象に13年度から開くコンテストで、毎年約500人規模の参加がある。その運営部署にも在籍経験がある大住さんが呼びかけたところ、上位表彰された経歴を持つ新田周平さん、堀中翔太さん、土肥秀幸さん、新内彰さん、川野孝太さんの5人が名乗りを上げ、新田さんの同僚小栗直也さんも興味を抱いて自費で参加した。 昨年11月下旬に小郡を訪れた6人は、地元のカモ猟師天本美博さん(73)から伝統の「無双網」を使って冬季に行われる猟の様子や、肉の臭みを抑える工夫などを取材。カモ肉を実際にさばき、農園や直売所も巡って食材の魅力を体感。天然カモ肉は流通量が限られているため、入手容易なアイガモの利用も念頭に「熊本の馬刺しのように、店で食べてもお土産でも良しというものを」(川野さん)と意気込んだ。年明けにはシェフ全員がそれぞれの工夫を凝らした料理を提案。小郡産の水菜、イチゴ、ミントに加え、地元JAの直売所で販売されているフリーズドライの小松菜のみそ汁を活用した料理も。江戸時代に久留米藩が小郡のカモを幕府に献上していた歴史にちなんだ料理もある。 3月27日にあった試食会では、「鴨のたたき 唐辛子黒酢ソース」「小郡産真鴨(まがも)と苺(イチゴ)の燻製(くんせい) 黒豚の泡にミントのアクセント」「小松菜と鴨味噌(みそ)の卵焼き」の3品が初披露され、好評を博した。レシピを元に料理を作った地元和食店の店主は「店のコース料理のメイン料理に」と意気込む。 シェフが在籍する東京のレストランで、小郡産カモ料理を提供する動きも出ているという。新名物を置き土産に、小郡での活動を締めくくった大住さんは「ここにはいい素材があり、外部への発信を磨けばという思いで始めたが、皆さんが張り切ってやってくれた。全国に広げたいという思いを込めたレシピです」と感慨深げに振り返った。 レシピは市観光協会ホームページで紹介しており、冊子版も配布中。同協会=0942(72)4008。 (小林孝弘)