なぜ「インタビュアー林修」は“神回”を生めるのか、『日曜日の初耳学』総合演出の田中良憲氏に聞く
田中氏は、林氏は相手の本音を聞き出すためにある行為を探っていると言う。 「林先生は番組の進行や流れをあえて無視して、僕が『次、行きましょうか』と合図を出しても、全く違う話をし続ける時があるんです。ゲストにインタビューしながら、どこでゲストのスイッチが入るのかを探しているのだと思います。 林先生は『一番熱を込めて話しているトークが絶対に面白い』という考えなので、それを引き出すために収録時間が延びてしまうこともあります。でも、林先生がスイッチを探し当てた時は、一気にトークの熱量が上がって、爆発的に面白くなります」(田中氏)
■『初耳学』チームの巧みな「編集力」 大物ゲストのキャスティング、相手の本音を引き出す林氏のインタビュー術、そうして引き出されるカリスマたちの本音と名言――。それらを視聴者にしっかり届く形に編集してまとめあげるのが田中氏を筆頭とした『初耳学』チームだ。 「インタビューの際にお話が複雑だったり、大きく脱線する場合は、林先生が言葉で整理して流れを軌道修正してくれますが、それでも一般の方には難しいなと思う場合は、ナレーション付きの映像で説明します。映像を編集して繋げるという点では、トーク番組は経験の少ないディレクターさんでもできなくはないんです。でも、そこを丁寧に編集することこそがクオリティに関わると、こだわってやっています」(田中氏)
田中氏は、アナログな手法で映像作りに取り組んでいるという。 「これが正しいのかどうかわかりませんが、僕は収録が終わってから、もう一回素材を見返して、自分で文字起こしをして、紙で構成を作るんですよ。ゲストの魅力や核心的な話を逃さないためです」(田中氏) そのこだわりは我々の想像を軽く超えていた。3秒に1度など映像を巧みに切り変えることで人が飽きない工夫をする。トークと映像、BGMを見事にシンクロさせることにより、林氏とゲストの言葉をより味わい深い「名言」として際立たせる。