事務局長ら懲戒解雇 背任の容疑者に便宜か 日P協 解職された元会長が歪みの内幕明かす「自分の知らぬ間に決まった」
公益社団法人日本PTA全国協議会(日P協=東京都港区)に損失を与えた背任容疑で、日P協元参与の男(54)=埼玉県さいたま市中央区=が再逮捕された翌18日、日P協の全国代表者会議が、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで開かれた。出席した複数の関係者によると、事件の概要とともに、容疑者に便宜を図ったなどとして、日P協事務局長の男性と事務局次長の女性=同市中央区=を業務命令違反で懲戒解雇を決定したことが報告された。参加者からは詳細な説明を求める声が上がった。 PTA私物化どこまで…工事代金1200万円水増しし役員の手に 日本PTA協への背任容疑で逮捕 さいたま市P協の業務上横領事件でも起訴
容疑者は、日P協が発注した同会館建物の外装改修工事代金の支払いで、請負業者に対して水増しした金額を送金させ、一部を自己のものにした容疑が持たれている。 容疑者の逮捕について、同会地方組織の役員の一人は取材に「よく知らないので答えられない」と言及を避けた。一方、別の参加者は「修繕費が雪だるま式に増え、明らかにおかしかった。(逮捕は)『やっぱり』と思った」と話し、「容疑者をかばっていた日P協の執行部の隠蔽(いんぺい)体質が問題。責任は相当重い」と語気を強めた。 日P協の太田敬介会長は、埼玉新聞の取材に「誠に遺憾であり、重大な問題と捉えている。警察の捜査に全面的に協力し、事実関係が明らかになり次第、厳正に対処する」とコメントを出した。太田会長は6月に容疑者がさいたま市PTA協議会の口座から現金を横領したとして逮捕された際も、同様のコメントを日P協ホームページで発表していた。 ■元会長が本紙に証言「クリーンな体制への突破口に」
容疑者の再逮捕を受け、当時、日P協の会長を務めていた金田淳さん(51)は埼玉新聞の取材に「クリーンな体制への突破口にしてほしい」と期待を語った。 金田さんは栃木県PTA連合会の会長を経て、2022年度に日P協の会長に就任。会館の外装を改修する工事については、22年夏ごろに容疑者から相談を受け、適切な業者から見積もりを取るように指示したが「知らぬ間に工事が始まっていた」と話す。 金田さんによると、日P協では当時、300万円を超える支出を行う場合は会長の決裁か理事会の承認が必要だったが、金田さんのもとには決裁の相談はなく、理事会の承認もなかったという。工事の契約書にも目を通していなかったにもかかわらず、日P協の会長印が押されていたことも判明した。 金田さんは23年6月に会長に再選されたが、今回懲戒解雇された女性事務局次長に対するハラスメントをしたとして、1カ月後の同年7月の理事会で解職された。同年9月に会見を開きハラスメントの事実がなかったことなどを主張。一方で、同月に会見した日P協側は金田さんの解職理由について「ハラスメントを含む不適切な言動があった」とし、契約書についても金田さんが契約書に押印したと主張していた。金田さんは情報開示請求を行い、日P協に説明を求めたが回答はなかったという。
金田さんは22年に疑者の知人3人が事務局員に就いたことや、自身が専務理事を務めており事務局運営の知識もあったことなどを挙げ「(容疑者が)日P協に対する強い影響力を持っていた」と指摘。「疑念の声を聞かずに真摯(しんし)に取り組まなかった当時の執行部にも問題がある」と訴えた。