87歳デイトレーダー藤本さんが語る、勝つための投資哲学
株式投資で1億円以上を稼ぎ出し、個人投資家から目標とされる存在の「億り人」。では、億り人はどのように資産形成を行ってきたのか。その投資の極意をひもとく連載企画が「億り人の『極秘投資術』」です。 今回は『会社四季報』が刊行された1936年に誕生した藤本茂さん。現在も朝2時に起き、日々投資に向き合っている敏腕投資家です。19歳から投資を始め、資産18億円を築いた投資手法を聞きました。 僕は1936年生まれで『会社四季報』は同い年みたいやね。昔は小さい『会社四季報』がいっぱいあったけど、今はワイド版を読んでます。 いつから読み始めたかは、もう忘れたぐらい昔だけど、証券会社の外務員が自分たちの証券会社の名前が書かれたカバーの『会社四季報』をプレゼントしてくれたのが最初かな。そこからずっと使っていて、今も定期購読しとるよ。 やっぱり株式投資は勉強しないと負けてしまう。『会社四季報』は投資のバイブルやから、これがなかったら業績についてなんてわからない。今はネットの情報とかニュースソースがあふれてる。若い人はそういう情報を信じて投資するのかもしれないけど、やっぱり信用できる『会社四季報』で勉強したほうがいいと思うよ。 株式投資というのは、命の次に大事な「お金」を使うわけや。だから、納得して投資しないといけないし、投資する銘柄とは「親子」や「兄弟」になるぐらい距離を近づけなあかん。 ウォーレン・バフェットやアナリストといった有名人が「こう言っていたから」というので投資してもダメ。だからこそ、『会社四季報』なんかを読んでしっかり自分で考えて、投資してほしい。 ■デイトレードでも「好業績銘柄」を選ぶワケ 『会社四季報』は会社の概要についても書いてある。やっぱり会社の事業を理解したうえで投資せなあかん。記者コメントや業績予想も頼りにしてる。僕は比較的短期間での投資やけど、それでもやっぱり今後も業績が成長しそうな企業へ投資する。 デイトレードと言ったら「需給」で、業績は関係ないと思う人もいるかもしれないけど、それだと負けてしまう。誰かが買いにきてくれないと、株価は上がらない。業績が伸びていれば、それを理由に上昇してくれるんですよ。 とはいえ、そういう好業績の銘柄でも、ずっと買い場がないまま上がり続けることはないわけやから、少し下がったところでトレードする。もし自分の考えと違う値動きをしたとしても、業績がよくて割安な銘柄を選んでいれば、株価は元に戻ってくれる可能性が高い。あるいは、ナンピン買い(保有している銘柄の株価が下がったときに、さらに買い増しをして平均購入単価を下げること)したら助かることもある。 だからこそ、短期トレードでも『会社四季報』を読んで、しっかり勉強せなあかんと言っている。「テクニカル」だけではなくて、「ファンダメンタルズ」もしっかり押さえて、PER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)・配当利回りは絶対の基本ということや。 ■決算プレーは場中発表銘柄に妙味あり 僕も実はデイトレーダーと言いつつ、実際に1日だけで取引が完結するのは2~3%くらい。漬物でいえば浅漬け・中漬け・深漬けがあるように、別に期間にそこまでこだわらんでもいいのと違いますか。 今日は決算発表の会社があるから、その銘柄を中心にトレードしようと思ってた。決算プレーの会社は場中に業績を発表する銘柄が注目。13時や14時に公表されたら、その決算で50円上がるのか、50円下がるのか、それを判断するのが面白い。あらかじめ過去の業績や『会社四季報』も読んでおいて、「これくらいの業績だったら、これくらい上がる、下がる」というのは予想しておく。 もしいい決算なのに売られていたら、チャンス到来。銘柄によってはアノマリー(経験則)というか、クセみたいなものがある。そこは長い間、相場を見てきた経験が生きるところや。場が引けたあとに発表する銘柄も多いけど、そういう銘柄は翌営業日にはみんな目を通しているから、うまみが少ないね。 「人の行く裏に道あり花の山」という相場格言がある。やっぱり、個人投資家は大きな機関投資家とかには太刀打ちできない。だから、中小型銘柄がいいと思う。そういう銘柄の中で、勢いがある銘柄とか、自分が日頃から好きな銘柄をチェックしている。 ■つねに「10倍、100倍株」を探し続ける 多くの人が「すごい資産ですね」って言ってくれるけど、全然そんなことないと思う。株式投資にかけている時間と比較すると、まだまだ足りない。資産100億、1000億ないと割に合わん。 ぜいたくしているわけじゃないから、食べるだけのお金はあるけどね。ただ、つねに10倍、100倍株を見つけたいと思ってる。別にお金がほしいわけやないよ。 やっぱり株式投資が楽しいんや。楽しくないと、朝の2時から起きて投資なんかできるわけないわ。株式投資で楽しいのは予想が当たること。競馬でも同じ。自分の予想が当たれば、うれしいわけや。 もっと株式投資をしたい、そういう気力が湧いているから、この歳になっても株式投資ができる。ずっとピカッときらめく銘柄を探し続けるよ。 (構成:井上昌也) 藤本 茂(ふじもと・しげる)/1936年生まれ。19歳で投資を始める。雀荘を経営しながら株式投資に打ち込み、1986年から専業投資家に。著書に『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』。岩井コスモ証券のYouTubeチャンネルで「 藤本茂の熟練投資術 」を配信中。 ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
藤本 茂