【虎になれ】勝敗分けた両軍の走塁 関西決戦最終ラウンド 来田走塁ミスで阪神に試合の流れ来た
<日本生命セ・パ交流戦:オリックス0-5阪神>◇13日◇京セラドーム大阪 「何もないで。エエ方で」。指揮官・岡田彰布も軽口が飛び出す連敗ストップである。もしスイープされていれば、正直、真っ暗な雰囲気になるところをグッとこらえた勝利だ。 初スタメン豊田寛の活躍、西勇輝の完封などいい面は数多くあったが、この日に限って言えば、両軍の走塁面に大きな差があったと思う。オリックスの21歳・来田涼斗と阪神の32歳・原口文仁のそれだ。 オリックスが痛かったのは1回のプレーだろう。「7番左翼」でプロ初スタメンの豊田が1番・来田が放った飛球をいきなり落球。岡田も「そら(うわっと)思うよ」と言った失策だ。 無死一、二塁になって3番・広岡大志は大きな中飛。ところが二走・来田が打球の大きさに反応したのか思わず離塁してしまい、結果的にタッチアップで三塁へ進めなかった。 来田はさらに4番・西川龍馬の遊直で今度は塁を飛び出してしまい、あっという間の併殺でチェンジ。先制機が無得点に終わった。敵将・中嶋聡も「初回のプレーがすべて」と振り返るほど。岡田は「あれは大きかったなあ」。試合の流れを左右する場面だった。 一方、阪神である。4回1死二、三塁。オリックス内野陣が前進守備のところで梅野隆太郎は遊ゴロだ。これで三走・原口文仁は猛然とホームを突く。遊撃・紅林弘太郎はワンバウンド送球でバックホーム。タイミングは微妙だったが原口は捕手のタッチをかいくぐり、生還する。 中嶋はリプレー検証を求めたが判定は変わらず、セーフ。野球好きの岡田は「なんでワンバンで投げたんかな」と不思議がったが、とにかく、これで2試合連続0点だったムードが吹き飛ぶ。そこから打線がつながり、一挙4得点だ。 野球は、勝負はこわい。繰り返すが1回、オリックスの攻撃、あそこで来田がタッチアップしていれば1死一、三塁。「遊直併殺」などということはまず起こりえないし、先制できていた可能性は高い。そう考えれば若い来田にとっては苦い教訓になったと言える。 そして原口は、やはり重要な男であることを再認識させた。本来はもっとスタメンで起用したいはずだが、セ・リーグは代打要員も重要な要素なので難しい面もある。いずれにせよ、敵地での強いソフトバンク戦を前に阪神は大事な試合をモノにした。(敬称略) 【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)