詐欺グループの隠れみの、オンライン賭博業界の闇 フィリピン
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【9月9日 AFP】フィリピン北部タルラック(Tarlac)州バンバン(Bamban)市で中国人が運営するオンライン賭博センター(POGO)が摘発された事件への関与が疑われ、逃亡先のインドネシアで身柄を拘束されたアリス・リアル・グオ(Alice Leal Guo)前市長が6日朝、フィリピンに強制送還され、帰国と同時に逮捕された。 バンバンのオンライン賭博センターでは、フィリピン人と外国人、計数百人が詐欺を強要され、拒否すれば拷問される危険にさらされていたことが明らかになっている。 3月に摘発されたこの施設は、市役所の目と鼻の先にあった。金融詐欺、誘拐、売春、人身売買、拷問、殺人にまで関係していることが判明し、業界廃止を求める声の高まりを受ける形でフェルディナンド・マルコス(Ferdinand Marcos)大統領が7月末、ついに禁止を発表した。 同大統領は「わが国の法制度の重大な乱用と軽視をやめさせる」と述べ、関与する外国人労働者に対しては、2か月以内にフィリピンを出国するよう命じた。 当局は、違法オンライン賭博業者の数は数百に上る可能性があるとしており、また40以上の合法賭博業者の多くも水面下では詐欺の拠点になっているとみている。 オンライン賭博業界を調査するリサ・オンティベロス(Risa Hontiveros)議員は7月の上院委員会で「アリス・グオ(市長)は氷山の一角にすぎない」とし、「この公聴会では、国際犯罪組織、地方および国政レベルの政治家、そして恐らく外国の悪意ある分子を含む、複雑で危険な犯罪ネットワークが明らかになりつつある」と述べた。 中国人グループが運営していたバンバンの詐欺拠点は広大な複合ビルで、オフィス棟や豪華な居住棟、大きなプールを備えていた。警察に通報したのは、3月にこの施設から逃げ出したベトナム人だった。 拠点では700人以上のフィリピン人、中国人、ベトナム人、マレーシア人、台湾人、インドネシア人、ルワンダ人が確認され、また複合施設を所有する企業の社長がグオ容疑者であることを示す文書も見つかった。 ■東南アジア全域で急増 詐欺の拠点は、東南アジア全域で急増している。犯罪組織は、労働者を勧誘・拉致し、強制的にオンライン詐欺に従事させる。 被害者らは、うその恋愛話や高収入をうたった仕事話に釣られて周辺地域を移動させられ、最終的には自らも偽の投資プラットフォームへの勧誘やその他の詐欺に加担することを強要されると話している。 公式統計によると、合法なオンライン賭博企業では、外国人とフィリピン人合わせて6万人以上が働いている。一方、フィリピン大統領府の組織犯罪対策委員会(PAOCC)は、違法なオンライン賭博業界では最大10万人が働いていると推計している。 ■フィリピン人を装った中国人なのか グオ容疑者の国籍をめぐっては、フィリピン人を装った中国人であるという疑惑も浮上している。南シナ海での領有権争いが激化する中、同容疑者の国籍は調査の重要な焦点となっている。 当局による調査では、グオ容疑者の指紋が、特別投資家居住ビザ(SIRV)を取得した中国人のものと一致したことが報告された。 オンティベロス議員は「これは私がずっと疑っていたことを裏付ける。グオ市長は偽のフィリピン人」だとし、「オンライン賭博事業による犯罪を促進するために、フィリピン人を装った中国人だ」と続けた。 映像は詐欺グループの拠点となっていたオンライン賭博センターと、逮捕されたグオ前市長。7月と9月6日に撮影・一部提供。(c)AFPBB News