フジテレビ「星になったスターたち」が染みた…MC上沼恵美子&香取慎吾だけの進行もいい(桧山珠美)
【桧山珠美 あれもこれも言わせて】 早いもので今年もあと10日余り。毎年この時期になると、1年間の総決算といった番組が放送される。17日放送「星になったスターたち」(フジテレビ系)もそんな番組のひとつで、今年亡くなったスターたちを偲ぶ番組だった。 ピーコさんが死去…弟おすぎさんは「ずっと福岡で暮らしたい」と真剣に話していた 昔のワイドショーはスターの結婚や離婚と同様に亡くなった際には即座にゆかりの人たちを集め、在りし日の姿を偲びつつその功績を称えた。 昨今はどうか。亡くなったという事実を伝えるのみで、あとは「残念です」とか「悲しいです」といった、Xにポストされた有名人の言葉を紹介するのみ。 たまに電話で話を聞くも、30年以上も前の共演者だったりして。そんな遠い昔のエピソードを語られても、だ。それを受けるコメンテーターの薄っぺらさといったら。何の追悼にもなっていない。そんな時代だからこそこういう番組が染みる。 MCは上沼恵美子と香取慎吾。ほかに余計なゲストがいないのがいい。その分、懐かしい映像やエピソードを見ることができたから。
私たちの見たかった追悼番組に
西田敏行や中尾彬、おすぎとピーコのピーコや今いくよ・くるよのくるよ……今年亡くなったスターが何人も。中でも「ちびまる子ちゃん」でまる子の声をつとめたTARAKOについてはフジテレビのアニメということもあり、とくに詳しく紹介。ともに仕事をしたスタッフの証言や亡くなる前に吹き込んだ次回予告の未公開音声も流され、見応えがあった。 中尾彬の最後の4日間を語る妻・池波志乃にも取材。後から見つかったという、中尾が生前、妻に感謝を伝えるメッセージが流されるなど感動の場面も。 それらの合間に語られた香取のエピソードも初めて聞くものばかり。いろいろあった香取もようやく自分のことを語れるようになったか。 この番組の収録後に亡くなった中山美穂、小倉智昭についても香取と上沼に追加取材して、組み込む念の入れよう。そのせいでカットされた人にはお気の毒だが……。 番組独自の取材とスタッフの熱意で、私たちの見たかった追悼番組に仕立ててくれたのはありがたかった。 ほかにも曙、小金沢昇司、桂由美、真島茂樹、キダ・タロー、稲川素子、桂ざこば、園まり、服部幸應、楳図かずお、唐十郎、アラン・ドロン……。 今年亡くなった人の多さといったら。なにやらあちらの世界の方が楽しそうに思えてくる。下手な番組よりもよっぽど見応えがある。人に歴史あり。フジテレビに秘蔵映像あり。 真面目な話、追悼番組をレギュラーでやった方が視聴率がとれるのではないだろうか。少なくとも私は見る。 (桧山珠美/コラムニスト)