【野球部訪問・神村学園②】昨夏4強メンバー10人をまとめる「背番号10」の主将の挑戦
昨年の第105回全国高等学校野球選手権記念大会で、ベスト4進出と大躍進を果たした神村学園。夏を経験したメンバーも多く残り、選抜甲子園でも上位進出を虎視眈々と狙っている。 【動画】神村学園、選抜直前の練習に密着! だが新チーム結成当初は、とてもじゃないが選抜甲子園を意識できるような状態ではなかった。夏の甲子園準決勝から、わずか1週間後には秋の鹿児島大会初戦を迎え、その後はかごしま国体にも出場。準備期間があまりにも短かった上、バッテリーも公式戦の経験がほとんどない状態で、中でも特に小田大介監督の頭を悩ませたのは主将の選出だった。 「正直、キャプテンを誰に任せるか悩んでいました。3年生にも意見を聞きましたが、なかなか決めきれなくて。どうしようかと悩んでいるところに、旅館を出る直前に川下 晃汰が私に直訴してきたんです。僕にやらせてくださいと」 長崎県出身の川下は、中学時代は諫早ボーイズでプレー。中学1年時にはU-12日本代表に選出されるなど、経験豊富な選手だったが、神村学園に入学後は怪我などで苦しんでいた。昨夏はベンチを外れ、主将としても構想にはなかったため、突然の申し出に小田監督は驚いたという。 「ちょっと待てと。俺も俺なりに考えがあるから、とりあえず考えさせて欲しいと伝え、そもそもお前はなぜキャプテンをやりたいのかと尋ねました。そしたら『僕がチームを勝たせたいんです』と言ってきて、他の選手たちも川下がいいですと。だったら、まずは本人のやる気を大事にしようと、川下に任せることに決めました」 夏の甲子園でベンチ入りしたメンバーが10人残る新チームで、川下はレギュラーの立ち位置ではない。プレーでも、言葉でも、抜群のキャプテンシーを発揮した前主将の今岡 歩夢とのギャップに苦しんだが、勝ち進む中で少しずつ手応えも掴みだした。 「束になったら強いチームだと思います。でも、今でもまだ束になることができていなくて、自分がもっと1日1日を無駄にせず、率先してチームをまとめないといけないと感じています」 川下のリーダーシップに関して、小田監督は「まだ少し遠慮が多い。キャプテンとは技術で引っ張るのではなくて、このチームを勝たせたいという思いや姿勢で引っ張らないと。お前が遠慮したらチームに戸惑いが生じるよと言っています」と合格点は出していないが、チームの状態自体は決して悪くない。 プレーで引っ張れなくても、存在感でチームを支える。背番号10の主将の挑戦が始まろうとしている。