合言葉は打倒尚志――福島県に吹く新たな風。今年度からインハイ出場校が2枠に増えた価値と新たな可能性
東日大昌平、聖光学院、学法石川、ふたば未来学園...
帝京安積は東京の帝京、新潟の帝京長岡との系列校で、2009年から本格的に強化を進めてきた。同年に清水商OBの小田監督が就任してから地道に積み上げ、13年に福島県リーグ2部に参入。16年には同1部に昇格し、サッカー部専用の人工芝グラウンドとクラブハウスが完成した20年からはプリンスリーグ東北で技を磨いてきた。 しかし、全国大会とは無縁。毎年のようにあと一歩まで迫りながらも涙を飲み、尚志の壁を越えられずにいた。福島県開催を追い風にし、インターハイ出場を決めたのは強化のスピードを上げていく意味で大きい。 選手獲得でも全国大会に出場した実績があるのと、ないのでは全く話が変わってくる。「尚志と同じ地区なので」と小田監督は苦笑いを浮かべていたが、今夏の躍進次第では新たな流れが生まれるかもしれない。 帝京安積だけではなく、他校も虎視眈々と全国行きの機会を狙っている。今夏は惜しくも準決勝で帝京安積に敗れたが、東日大昌平も強化を進めており、昨年度には付属中が初の全国中学校サッカー大会に出場。中高一貫のメリットを活かしながら、新たな風を吹かせようと試みている。 惜しくも今予選は2回戦で敗れたが、東北プリンスリーグで戦う聖光学院も侮れない。2020年度に選手権に初出場した学法石川も地元の福島の選手に加え、関東圏や宮城などから選手が集まってきている。 そして、ふたば未来学園も、市立船橋時代に選手権やインターハイで日本一に導いた実績がある朝岡隆蔵監督を今季から招聘。今予選は初戦敗退に終わっており、全国を席巻するまでにはもう少し時間がかかるが、「近い将来、日本一を獲りたい」と話す指揮官の目は野心に満ち溢れていた。 2枠となったことで、全国の舞台で経験を積むチャンスが増えたのは間違いない。2日に行なわれた福島県予選決勝では、帝京安積が尚志を2-2の末、PK戦でくだして初優勝を成し遂げた。 尚志の安泰とは言えず、勢力図が変わる可能性は十分にある。今後も福島県の高校サッカーから目が離せない。 取材・文●松尾祐希(サッカーライター)