「待機児童ゼロ作戦」から13年 待機児童問題はなぜ解消されないのか
「潜在的待機児童数」はなぜ増えた?
なぜ対策が間に合わないほど潜在的待機児童数が膨らんでしまったのでしょうか。これは共働き家庭が増加したことも考えられますが、待機児童数のカウント方法が自治体によってバラつきがあったことも要因と指摘されています。 昨年2月、杉並区役所前で母親たちが待機児童問題解消を求める訴えを起こしたことが話題になりましたが、この際に母親たちが訴えたことのひとつが、「待機児童のカウント方法がおかしいのではないか」ということでした。これを受け、4月26日に東京新聞が23区などのカウント方法を調査。杉並区は5月に、それまでの定義では94人だった待機児童数を285人と修正しました。 保育所への入所を希望したものの叶わず、やむを得ず一時保育やベビーシッターを利用していた人、育休を延長した人など、何らかの対策を自ら取った人の数が待機児童としてカウントされていない場合があったのです。
「保育所」増設には何が課題?
舛添都知事は、待機児童数ゼロのための具体的なプランの1つとして、高架下の利用を挙げています。これは都内に保育所を新設する土地・スペースが少ないことが理由とされており、知事は「通勤で利用する駅に預け、帰りにピックアップするのが働く女性にとって便利」 という主旨の発言をしています。ただし、これには騒音や防犯といった環境の面で「保育にふさわしくないのではないか」という意見もあります。保育所増設について論じられるときに問題となるのが、「質か量か」です。 2001年以降、認可保育所の規制緩和が行われ、民間の新規参入に積極的な自治体もありますが、一方でこれに「保育の質を下げるべきではない」「民間で質の良い保育ができるのか」と危機感を示す声もあります。本来であれば「質と量」の両方が充分であるべき保育において、どちらを優先するかについても議論になっていること自体が、待機児童問題の深刻さを表しているとも言えます。 読売新聞は2月13日に「政府は12年に成立した子育て支援3法の関連で、保育所や認定こども園などの利用定員を増やす「量の拡充」に約4000億円、職員の処遇や配置数などを引き上げる「質の改善」に約3000億円を充てる方針を示していた。だが、政府が今回改めて行った費用の試算では、「質の改善」に毎年約7000億円必要となることが明らかになった」 と、4000億円の財源不足が明らかになったことを伝えています。 財源の確保のためにも、「どのような保育のあり方が求められているのか」を慎重に議論していく必要があるでしょう。 (小川たまか/プレスラボ)
■ことば:「保留児童」と「待機児童」 横浜市の、「保留児童数」と「待機児童数」の定義は次のとおり。 ・保留児童数…保育所に入所申し込みをしたものの、定員超過により入所できなかった児童 ・待機児童数…保留児童から、「横浜保育室」や家庭的保育事業、一時保育などの利用者、育児休業中家庭の児童、特定の保育園のみを希望する児童などを引いた数。つまり、希望した保育所に入所できていない状況であるものの、代替となる策を取っている家庭の児童は「待機児童数」にカウントしていない。