“周辺の動き”も活発化…『県立高校再編』の議論が本格化していく中で再編対象となる危機感も 富山
富山テレビ放送
富山県内の出生数が去年、初めて6000人を下回り、少子化が加速しています。 そうしたなか、ここにきて周辺の動きも活発になっている県立高校の再編についてお伝えします。 現在、県は3年後、2027年度以降の県立高校の再編について議論を進めています。 今年度に入り、県教育委員会と県議会の最大会派自民党議員会、それぞれが地域住民の意見をヒアリングする場を設けるなど議論が活発になってきています。 *参加した住民 「意味のある再編。くっつけることでいいことがあったら」 「前例踏襲では乗り越えていけない状況」 今年度は、私たち県民が高校をどう捉え、再編をどう考えていくか、議論する1年となります。 来年度以降は、県民の意見を踏まえ、具体的な校名を交えた議論が本格化していくものとみられています。 そもそもなぜ再編が必要で、どれだけの規模の再編が必要とされているのでしょうか…。 県教育委員会が根拠に示しているのが県内の中学卒業予定者数の推移です。 ピークだった1988年は1万9000人余りでしたが、今年は8625人と半分以下に減少しています。 さらに2038年にはピーク時の3分の1以下、6000人を下回る見通しです。 全日制の県立高校は現在34校ありますが、今後1クラス40人でいまの学級数を維持しようとした場合、県教委は今後、10校ほどの削減が必要だとしています。 今後15年以内に10校。 なかなか衝撃的な数字ですが、対象校はどう選ぶ方針なのか…。 昨年度は学校関係者や経済界などの検討会議が開かれ、再編基準の方向性がまとまりました。 それが「1学年4学級未満または160人未満」。 ただ、「職業科の単独校や地理的な制約がある場合などは対象としない」とされました。 これは泊高校や水橋高校など4校が廃校となった前回2020年の再編と同じ基準です。 そして、これに加えて、今回付け加えられたのが、「1学年4学級以下または160人以下」の学校も検討対象にするということです。 この「未満」か「以下」によって、状況が大きく異なります。 県内の県立高校34校を示したものです。 「4学級未満または160人未満」とする前回の基準では赤色の10校が対象でしたが、それを「4学級以下または160人以下」とすると、こららの17校に増えます。 17校となると、現在ある高校の半分ですが、こうした基準や再編のポイントについて有識者と県議会議員に聞きました。 長年、県立高校の教師を勤め、県教委に赴任した際は第1期高校再編を担当した林誠一さん、現在は、富山大学大学院の教授です。 「高校の数を減らすことは仕方ない」としたうえで、一般的には大規模校のメリットの方が大きいと話します。 *富山大学大学院 林誠一教授 「小規模には小規模のメリットはあるが、一般的には生徒にとっても教員にとっても大規模校のメリットは大きいと思う。大事にしたいのは学級規模の前に学校の生徒数の大きさ。高校生になればひとつの交わりの中で鍛えられる部分がある」 再編対象校については…。 *富山大学大学院 林誠一教授 「再編対象校は全学校。小さな学校のことだけを議論していても良くない。再編統合する相手校も変わる必要がある。何らかの新しい学校づくりに関わる。そういう意識を教員を含めて、大人全員が持つ必要がある。そうじゃないと、これまでと同じ繰り返しになる」 県議会の最大会派、自民党議員会の永森直人政調会長も、「高校の数を減らすのは避けられない」とし、大胆な再編議論が必要だと指摘します。 *県議会自民党議員会 永森直人政調会長 「伝統校であったとしても、タブーなく、その在り方を検討していく。3000人子どもが減り、例えば10校なくさないといけないとなったときに、そういう議論は避けて通れない」 少子化のスピードを見れば、小規模校、大規模校問わず、将来を見据えた大胆な議論が避けられないとの見方です。 といいつつも再編の対象校をもつ自治体では危機感が広がっていて、高校存続へのアイデアや意見を県に提出します。 *立山町 舟橋貴之町長 「そもそも定員割れをしていなかった雄山高校を160人から120人にしたのが県教育委員会。新川学区から人を減らしたいからと。雄山高校に通っている生徒の大半が新川学区ではない。富山市などの近くの学校」 立山町にある雄山高校の定員は昨年度から40人削減され、1学年3学級120人となりました。 舟橋町長は県に対し、新学科を設立して1学年160人に戻すよう求めるとともに、雄山高校は富山市から通う生徒が多いことを踏まえ、新川学区から外すよう県に要望する考えです。 また、同じ新川学区にある上市高校は、今年度の入学者が1学年150人の定員に対し、96人にとどまりました。 町は、上市高校の高い就職率をアピールする必要があるとして校名を「県立キャリア教育高校」に変更するよう県に要望する考えです。 *上市町 中川行孝町長 「高校と町と町の事業者と一緒に、職業を知る会や職場見学会などの取り組みを5、6年してきている。そういう実態を端的に表す言葉としてキャリア教育という名前を使い、皆さんに知っていただきたい」 このキャリア教育の一環で上市高校では、高校では珍しくアルバイトが解禁されました。 高校存続に向け、地元の「市町村」が積極的に関わる動きが全国で増えています。 こちらは、熊本県立高森高校です。 定員割れに悩む高校に、起死回生の一手として新設されたのが、「マンガ学科」です。 プロの漫画家や編集者を育成する全国の公立高校初の取り組みで「北斗の拳」や「シティーハンター」などを生んだ編集者が教壇に立ちます。 昨年度の募集倍率は1.82倍と好調で、入学した40人のうち県外からの生徒は11人でした。 地元の高森町は全国の生徒を受け入れるため寮を新設し、その運営を担います。 一方こちらは、愛媛県の松山南高校砥部分校です。 当初、統廃合の対象でしたが全国の公立高校では初となる「ゲームクリエーションコース」の新設が決まり、存続することになりました。 このゲームクリエイターを育成するアイデア、実は地域住民から出されたものです。 砥部町も、全国の生徒を受け入れるため寮を新設しています。 このほか、県立高校を市町村で運営する県もあります。 高校再編は、単なる数合わせではなくいかに生徒にとって魅力のある学校、教育環境をつくれるか、そのチャンスでも、あるはずです。 行政だけでなく、地域住民の本気度が問われています。
富山テレビ放送