《衝撃の対談》作詞家・松本隆×️歌手・クミコ「日本には大人のためのちゃんとした恋の歌が足りない」松田聖子、薬師丸ひろ子、KinKi Kidsの作曲秘話も
マネジャーが電車のホームで飛び降りる寸前だった
クミコ :松本さんに送ったCDは、それこそおもちゃ箱をひっくり返したようなアルバムで、あがた森魚さんの曲が最初に入っていたり、伊藤咲子さんの『乙女のワルツ』や笠置シヅ子さんの曲や、自分が好きだと思うものを手当たり次第まとめた感じだったんです。お金にはならないことをやって、楽しかったけれど、あのままだったら何も突き詰められないまま一生を終えたかもしれません。松本さんが関わってくださったことで、ようやく歌い手としての核みたいなものが固まって、プロの自覚を持つことができた。それは、すごく大きな転機になったと思います。 最初にプロデュースしてくださったアルバム『AURA』(2000年)は、アクがかなり強い作品ばかりで、歌にも社会に適合できないような人ばかり出てくる(笑)。エロティックがキーワードのひとつだと思いました。 松本:アイドルソングを作っていた頃のぼくは、みんな処女みたいな世界にいたから、その反動が出たのかもしれない(笑)。『硝子の少年』の時は、締め切りギリギリになっても言葉が降りて来なくて、マネジャーが電車のホームで飛び降りる寸前だったけど、大人の歌を歌ってくれる人が現れたおかげで、ほとばしるように言葉が出て来た(笑)。 クミコ:当時の私は40代半ば。エロティックな部分と生きることがすごく密接な距離にあったし、刺激的ですごく面白かった。何より聖子ちゃんの歌を書いている人がこんな詞を書くの? みたいな驚きが新鮮でした。 松本:気づいている人がいるかは分からないけど、聖子にも”隠れエロティック”みたいな詞はいくつか書いているんだよ。経済的には昔の曲が支えてくれるので、クミコさんのアルバムでは、好きなことを好きなようにやりたいようにやらせてもらった。 若い頃は一晩に6曲書いたこともあるけど、今のペースは一年に一曲くらいじゃないかな。アルバムに関しては、この20年くらいクミコさんにしか書いてない。 昔、仕事した人たちから頼まれることもあるけど、非常に書きにくいんだよね。向こうは還暦ぐらいで、僕は古希。全盛期の自分に敵わないのことは分かっているから、友情のためにもやらない方がいいなと思って。
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