大関昇進の貴景勝は横綱になれるのか?
貴景勝が大関昇進を決めた。春場所千秋楽で、7勝7敗のかど番大関栃ノ心との“入れ替え戦”を制して、3場所連続の2桁勝利を手にした。現行のかど番制度になった1969年名古屋場所以降初めてと言える「世紀の一番」を制した22歳を、日本相撲協会審判部は満場一致で大関に推挙した。 千秋楽翌日の一夜明け会見で、貴景勝は新大関としての意気込みをこう語っている。「力士だったら次の番付(横綱)を目指すのが当然でしょう。その気持ちを持っていないと、大関は張れない。どういう大関になりたいというより、さらに上を目指してやっていきたい」。大関は横綱への通過点。平然とそう言い放つのが、けれん味のない相撲をとる男の魅力だろう。 貴景勝に対する大相撲ファンの期待の大きさの背景には、様々な理由がある。まずは“稀勢の里ロス”を埋める日本人スターへの期待だ。 稀勢の里は、待望の日本人横綱として絶大な人気を集めながら、横綱デビューの17年春場所で負った左大胸筋断裂の影響で、わずか在位12場所にして引退した。入れ替わるように大関昇進を決めた若者を、その後継者と見る向きは多い。さらに元横綱貴乃花親方の直系である点も影響している。協会の改革を頑なに訴え、最後は孤立無援となって協会を去った。その生きざまを、貴景勝が貫く突き押し一辺倒のスタイルに重ねる人がいるのかもしれない。 大関となった貴景勝の次なる挑戦はもちろん横綱である。 その可能性はどうなのか? 現在はお祝いムードも手伝い、次期横綱の筆頭候補と、とらえられている。確かに、勢いにのる22歳の若者はあっという間に角界の頂点につくかもしれない。ただ、ハードルは高い。 平成元年(1989年)以降、平成2年夏場所の霧島から、昨年名古屋場所の栃ノ心まで、大関は25人誕生した。そのうち横綱に昇進したのは、曙、貴乃花、若乃花、武蔵丸、朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜、稀勢の里の9人しかいない。大関昇進の条件は明文化されていないが、基本的には「直近3場所で、原則三役力士として通算33勝以上」とされている。そこに「優勝」の2文字はない。しかし、横綱昇進の条件となると違ってくる。 「直近2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績」とされている。横綱になった9人のうち、直近2場所が、準優勝&優勝だった鶴竜と稀勢の里を除く7人は、2場所連続優勝をクリアした。 一方、横綱になれなかった大関16人のうち、平成18年初場所に誕生した琴欧洲以降の8人は大関在位中に2場所連続どころか2度の優勝すらしていない。