CAT債のリスクモデル改良を迫られるヘッジファンド-気候変動で
(ブルームバーグ): 2023年に最も高い収益を上げたヘッジファンド戦略の原動力となった保険リンク証券(ILS)のリスクモデルが、気候変動が巻き起こす比較的小規模な自然災害を巡って試練にさらされる場面が増えている。
ベテラン投資家によれば、カタストロフ(CAT)債などのILSは、山火事や雷雨といった頻度の高い事象に起因する新たなリスクを過小評価しかねない計算に基づいている。
CAT債などのILSプロダクトに特化した36億ドル(約5600億円)規模の投資マネジャー、エレメンタム・アドバイザーズは、わずか数年前に承認したばかりの山火事関連のモデルの改良に、かなりの時間とリソースを割く必要があった。
エレメンタムのデータ・分析責任者、ジェイク・ウェーバー氏はモデルについて、「過去のトレンドを基準としており、現在の気候に合わせたものではなかった」と述べている。
200万件近い米国の山火事に関するデータを分析した結果、モデルが示唆するよりも「カリフォルニア州北部の焼失した地域では統計的に有意に頻度が高い」ことを同社は確認したという。
エレメンタムは最終的に、山火事に関してより正確な予測を導き出すことができ、それが金利引き上げを交渉するのに役立った。
現在470億ドルの規模を持つCAT債市場は、まれにしか起きないが破壊力の大きい自然災害による経済的リスクを、保険会社が資本市場に転嫁できるようにするため考案された。所定の大災害が発生しなければ、投資家は大きなリターンを得る可能性があるが、発生した場合、債券の価値が失われることもある。
CAT債は昨年20%上昇し、フェルマー・キャピタル・マネジメントなどのヘッジファンドは過去最高の実績を残した。専門性の低い投資家もCAT債を買い始めており、欧州の規制当局はCAT債の保有を個人投資家に認めることも検討している。一方でILSの調査会社アルテミスによると、 保険会社は「記録的なペース」で新たなCAT債を発行している。