すっかり衰退した日本という国が滅亡しないためにできることはあるのか
人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。 ※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです。また、本書は2021年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
高齢者を守ることと若い世代の活動は両立可能
少子高齢化に悩む日本は、「若い国」に比べて大きなハンディキャップを背負っているのである。老いた国だからこそ、「やれることは、多少制約があっても実施に移す」という姿勢を意識的にとらなくてはならない。 コロナ禍のように世界中が同じ理由で経済的苦境に陥り、その復興を同時スタートで競うというシチュエーションは珍しいが、まさに各国の国力が試されている。社会が萎縮し、「無難」を重視していたのでは、日本経済だけが出遅れる結果となろう。 すでに日本の経済回復の遅れを示す予測は出ている。2020年度の実質GDPは、前年度比4・6%減となり、リーマン・ショック時の2008年度の下げ幅(3・6%)を上回った。事実上、戦後最悪の落ち込みである。 国際通貨基金(IMF)が2021年4月に発表した世界経済見通しは、2021年の全世界におけるGDP成長率を実質値で6・0%と予測している。しかしながら日本は3・3%でしかなく、日本よりも感染状況が悪かった米国や欧州などよりも低く見積もられている。2022年も2・5%にとどまり、2021年、2022年ともG7(主要7ヵ国)で最下位だ。 日本が低く見積もられたのは、ワクチン接種の遅れや日本経済の抱える構造的な生産性の低さなどが要因だが、「社会の老化」による国民の消費マインドの冷え込みがそれに加わったなら、致命的となろう。 「社会の老化」の中で、とりわけ看過できないのが、若い世代に手枷足枷を嵌めたことである。政府や地方自治体は、「高齢者の命を守るために、若い方は外出を控えるように」と繰り返し呼びかけた。 だが、政府のこうした考え方は全く見当違いだ。守るべきは、社会の苦境を転じ得る若者のほうである。若い世代の動きが止まったらますます、社会の勢いはなくなってしまう。自ら国家を滅ぼそうとしているようなものだ。 感染弱者である高齢者の健康を最大限守ることと、若い世代がアクティブに活動することは、両立可能である。そういう環境を用意するのが政府や自治体の役割であり、日本を衰退から守る重要な戦略なのだ。 やりようはいくらでもあったはずである。陰性が確認された人の社会活動には制限をかける必要はなかった。いまや多くの時間をかけずに陽性かどうかを判定できる検査機器も開発されている。職場や学校の入り口で全員を対象に実施したならば、会社の建物内、校内は「安全な場所」となる。飲食店に入る前に検査して、陰性の人ばかりで会食できれば、休業や営業時間の短縮を要請することもない。 こうした「安全地帯」を一つでも増やしていけば、若い世代への制限を完全に取り除くことができないにせよ、かなり限定的なもので済ませることは可能だ。