能登地震に広がる〝共感疲労〟 応援消費が和らげる 「心が楽になった」
「能登半島地震の被災地のテレビ映像を見ると苦しくなる。力になれない自分を責めてしまい、涙が出る」。宮城県の70代女性から本紙「農家の特報班」に、そんな声が寄せられた。改善方法を探っていくと、「共感疲労」という心の動きがあることが分かり、有望な対処法の一つに、農産物などの「応援消費」が浮かび上がった。 【表で見る】共感疲労とは・注意点も 被災者の気持ちに寄り添うあまり、自分も同じ苦しみを受けていると感じ、さらには手助けできない自分を責めてしまう──。新潟青陵大学大学院の碓井真史教授(臨床心理学)は、「共感疲労」をそう説明する。 テレビで戦争の映像が克明に映し出されるようになったウクライナ危機後に目立つようになった。 碓井教授は対処法として、「テレビやSNS(交流サイト)に触れる時間を減らして」と促す。そうすると次第に改善することが多いという。 もう一つ、碓井教授が有望視するのが、被災地の農産物などを積極的に利用する「応援消費」だ。「離れていても『応援ができている』と実感でき、気持ちが和らぐ」とみる。
東京からでもエールを送れる
実際、応援消費で心は落ち着くのだろうか。記者は、石川県産の農産物を利用した人を取材してみた。 「食べて応援しようと思って実際にやってみたら、自分の心も楽になった」。そう話すのは東京都大田区に住む20代女性。 石川県に直接的な縁はないが「ぐしゃぐしゃになった街の様子をテレビで見るたび心が苦しくなって。何もできないつらさは感じていた」と吐露する。 その女性が応援消費を実践したのは、東京・銀座にあるJA全農の直営飲食店「みのる食堂」の三越銀座店。2月中旬、「石川県応援」と記したポスターを店先で見かけ、3歳の娘や友人と入店したという。 同店のご飯は、2月から全て石川県産のブランド米「ひゃくまん穀」に切り替わっている。その女性は「自分も楽しみながら、東京からでもエールを送れる」と顔をほころばせながら、箸を進めた。 3歳の娘にも感想を聞いてみると、はにかみながら「おいしい」と答えてくれた。