「G-SHOCK Tシャツ」3時間で完売 カシオ、”色落ちにタフな服”開発しました
どんな衣類であっても、ずっと使用していると“寿命”がくるものである。例えば、Tシャツ。長く使っていると、首回りがヨレたり、黄ばみが取れなくなったり、穴が開いてしまったり。 【画像】普通の黒Tシャツとどう違う? 日光に照射で色がこんなに違う、首回りもヨレにくい、色褪せに強い「G-SHOCKの黒Tシャツ」(全14枚) 着れば着るほど、劣化のスピードが速くなるわけだが、“色褪(あ)せに強い”黒のTシャツが登場した。商品名は「GXFAB」。耳にしたことも目にしたこともない人が多いと思うので「ん? どこの会社がつくっているの?」と思われたかもしれないが、カシオ計算機(東京都渋谷区)である。 カシオといえば、電子ピアノ、電卓、時計などを想像する人が多いかもしれないが、今回のTシャツは「G-SHOCK」のスピンアウト商品になる。同社のECサイトで販売したところ、大々的にPRしていないにもかかわらず、3時間で完売したのだ(ロングTシャツはその数時間後に完売)。 この商品を開発するにあたって、4年前にプロジェクトチームを結成した。このとき、決まっていたのは「G-SHOCKの開発思想を受け継いだモノをつくる」ことだけ。具体的にどんな商品をつくるのかは決まっていなかったので、ふわっとしたカタチでスタートした。 ところで、G-SHOCKの開発思想とは何か。商品が登場したのは、1983年のこと。当時、腕時計といえば落としてはいけないデリケートなモノだったが、開発担当者がこのようなことを考えた。「落としても壊れない丈夫な時計をつくれないか」と。 試作機をつくって、研究開発センターの3階の窓から、何度も何度も落下させる。壊れ方などを分析することで、衝撃を和らげる素材と硬い材質のフレームを組み合わせればいいかも、といったことが分かってきた。 その後も、あれこれ頭と手を動かすことによって、商品が完成。「タフネス」(強さや頑丈などの意味)という言葉をコンセプトに掲げ、これまで累計1億5000万個以上を販売しているのだ。
タフネス+サステナブルの価値を提供
G-SHOCKの関連商品を調べてみると、これまでにもさまざまな商品が登場している。帽子もあれば、マグカップもあれば、靴下もあれば、Tシャツもある。今回のTシャツと何がどう違うのかというと、先ほども紹介したように「商品に開発思想」があるかどうかである。 これまでの商品はG-SHOCKのロゴなどをペタッと貼っただけのモノが多いが、今回のTシャツは開発思想が込められているので、商品から「強さ」や「頑丈」などが伝わってこなければいけない。こうした取り組みは、G-SHOCKが誕生してから初めてのことである。 そんなこんなで、プロジェクトがスタートしたわけだが、メンバーはどのような議論を重ねたのだろうか。「アプリのようなサービスはどうか。いや、食べ物や飲み物はどうか」といった話があったそうだ。さまざまなアイデアが出ては消えて、出ては消えてを繰り返す中で、なぜTシャツに決まったのか。 プロジェクトメンバーの1人が「アパレルの大量廃棄」に着目した。環境省のデータ(2022年)によると、1日に処分される衣類は1200トンにのぼる。毎日大量の衣類が捨てられるわけだが、「少しでも長く使えたら、それは環境に優しいモノになるのではないか」(プロジェクトメンバー)と考え、Tシャツを開発することに。 とはいえ、いきなり「色褪せに強い」Tシャツに決まったわけではない。G-SHOCKのコンセプトであるタフネスを考えると、「穴が開かない」「破れない」といったモノがいいのではないかといったアイデアが出てきて、実際に防弾チョッキで使われる素材でジャケットなどをつくってみた。しかし、これは失敗。「ゴワゴワして、日常で使えるモノではなかったですね」(同)とのこと。 このときに、気付いたことがある。時計と全く同じ価値を提供しても、お客に支持されないのではないか。考えを軌道修正することで、「色褪せに強いTシャツはどうか」という話になったという。であれば、長く使えるので、タフネス+サステナブルの価値を提供できるのではないかと考えたのだ。