「製造工場は、のび太くんの家に似ていた」『脱法ドラッグの罠』著者・森鷹久氏に藤井誠二が聞く(第4回)
藤井:この本を読んでびっくりしたのは、その買ってるところがちゃんと普通に東京都内にあって、殺虫剤とか農薬を輸入してる会社だったそうですね。 森:その会社の登記を私も取って確認をしたんです。ただよく分かんないんですよね。いろんな業種が書いてあって、登記の中に(業種として)殺虫剤とかそういう農薬目的でと書いてあった。いわゆる粉屋なんていう言い方をするんですけど、その化学物質を中国から輸入していた業者の方で、彼らの言い分としては、その化学成分を堂々と税関を通して輸入されてるわけです。で、なんの問題もないと。人体摂取目的でさばいてるわけではない、農薬とか殺虫剤目的、しかもそれの研究用に入れてるというふうにおっしゃる。彼らの言い分ということなんですけど。 藤井:なるほど。じゃあそれと、そのなんかよく分からない葉っぱを混ぜてるのが今、危険ドラッグと言われてるもんなんですね。それがだから人間の脳や体にどう作用するかなんてのはもう分からないわけですね。 森:分からないです。一部で覚せい剤より危険ドラッグのほうが危ないと。怖いと言われています。 藤井:お話を聞いてると完全に、もちろん覚せい剤も危ないけれど、完全にその劇薬のほうが、どんどんそれがまたバージョンアップして危険極まりないものに進化している。完全にこれは人間を狂わす「ドラッグ」ということですよね。 森:なので、覚せい剤であれば、変な言い方をするとある意味で安全ではないんですが、中毒に陥って、急性中毒なんかに陥って病院に担ぎ込まれても、やはり医療関係者の方も、あ、これは覚せい剤だとわかる。 藤井:要するに治療するノウハウがありますよね。 森:ええ、あると思うんですね。ただ危険ドラッグやハーブの場合は、医療機関の方がハーブだろうと思っても、その医療関係者の方が得ている知識よりも、もっとさらに強いものを患者が吸ってる場合もあるわけですね。どんどんバージョンアップしているから。 藤井:使用している本人が何を飲んでるかも分かんないから、医療機関も手の施しようがないってのもあるっていうことですね。 (第5回に続く) -------------- 森鷹久(もり たかひさ) 1984年生まれ、佐賀県唐津市出身。高校中退後、番組制作会社を経て出版社でヤングカルチャー誌やファッション誌を編集。その後、フリーランスの編集者・ライターになる。精力的にドラッグ問題を取材。 藤井誠二(ふじい せいじ) 1965年愛知県名古屋市生まれ。ノンフィクションライター。高校時代よりさまざまな社会運動にかかわりながら、週刊誌記者等をつとめながら一貫してフリーランスの取材者。『17歳の殺人者』(朝日文庫)、『暴力の学校 倒錯の街』(朝日文庫)、『人を殺してみたかった』(双葉文庫)、『コリアンサッカーブルース』(アートン)、『文庫版・殺された側の論理』(講談社アルファ文庫)、森達也氏との対話『死刑のある国ニッポン』(金曜日)、『アフター・ザ・クライム』(講談社)、大谷昭宏氏と対話『権力にダマされないための事件ニュースの見方』(河出書房新社)、『三つ星人生ホルモン』(双葉社) 等、著書多数。