「製造工場は、のび太くんの家に似ていた」『脱法ドラッグの罠』著者・森鷹久氏に藤井誠二が聞く(第4回)
藤井:大麻じゃないんですね。 森:では、ないです。なんの変哲もない。で、それをざっとステンレスのボウルの中に入れる。他方で白い粉を──これはおそらく覚せい剤ではないとは思うんですが──いわゆる危険ドラッグの主成分となるものだと思うんですが、それを溶剤で溶かしてボウルに混ぜていくんです。白い粉は水に溶けないらしくて、溶剤も非常に揮発性の高いような、シンナーではないんですけど、すごい刺激臭がする、つんとするような目にくるような、そういう溶剤でその粉を溶かすんです。ただその過程でこれが何グラムとか、このタイミングで混ぜるとか、そういったレシピ的なものはまったくなくて、ほぼ目視。 藤井:適当に目分量で作ってるんですね。 森:適当に。溶剤混ぜてて粉がたまってきたら、ちょっと溶剤をまた追加しようかとか。それを金属製のスプーンで、ボウルに入った葉っぱに振りかけながら混ぜていくのです。いろんな作り方があると思うんですけど、私が見たところは最後にちょっと湿った状態のそのハーブをばーっと敷いて、そこに最後スプレーをかける。最後にちょっと離れたところから扇風機で乾かす。扇風機が近いと飛んじゃうっていうことで、5~6台ぐらいあった。 藤井:乾かして、乾燥させて。 森:で、終わりです。 藤井:なんか全然工場って感じじゃないですね。家内工業、内職みたいな感じですよね。 森:内職です。 藤井:で、その白い粉っていうのは、でもなんらかのケミカルなもんなんですよね。 森:だと思われます。 藤井:それをじゃあどっかから仕入れて買ってるわけですね。 森:そうです。 藤井:取材されたとき、どういう人が作ってるんですか。それは闇社会の人なんですか。ヤクザではない? 森:厳密に言えば、一般人から見ればという意味ではやくざの方はいます。ただ暴力団排除条例というのが施行されてから、いわゆる形だけの破門だったりとか、絶縁だったりとか、そういうのが暴力団内部でやられてるということで、まずそれ以降半グレっていわれるような人たちは増えたと思うんですけど、やっぱりそういう方は非常に多いです。辿っていけば、どういうところにたどり着くとか分かんないんですけども、やはりそういう方はいらっしゃるのではないかなと思います。 藤井:なるほど。じゃあそういう筋の人たちが、たまたまリストラに遭っちゃった人とかをバイトで雇ったりとかして、雇われた側は、自分たちが何やってるかよく分かんないけど、ドラッグを作ってることに関わっているというふうになっちゃってるってことがあるんですね。 森:つくっている人たちは、いくら危ない、危険だといわれながらも禁止されてない、じゃあ禁止されたらやめるよという言い分です。それは作ってる方々も、使用してる方々もまったく同じなんですね、その言い分が。