あばれる君、実は読書家!? 何度も読み返す本には幅広いジャンルが【私の愛読書】
どんな時代にも通じる「あるある」がお笑いに生きている
――次の一冊『大人養成講座』は、30年ほど前に発売された本ですね。 あばれる君:石原壮一郎先生の言い回しがすごくおもしろいんですよ。すごく皮肉が利いていて、全部のエッセイが超おもしろい。みんなが言わないようなことを言っているんです。飲みニケーションとか言う上司は自分に自信がないから誘ってくるんだ…みたいなのをうまく言い回すんですよ。それがとにかく笑える。ずっと持ち歩いていた時期があって、何度も読み返しています。 ――この本はどんなときに出会ったんですか? あばれる君:芸人になってからです。その頃はおもしろい本とか、笑える本を探していたので。ほかにもいろいろ、お笑いに生かせそうな本を読みあさりました。 ――役にも立つし、笑えるっていうのがいいですね。 あばれる君:大人養成講座と言っていますけど、全部ふざけているんですよ、この本。カラオケのデュエットは大人の基本だからあきらめて身を委ねるべし…とか、やめた職場に顔を出すおじさんを優しく扱え…みたいな。 ――どんな時代でも通じそうですね。 あばれる君:そう、ずっと通じる「あるある」。僕のお笑いにも生きていると思いますね。 ――読み返すのはどんなときですか? あばれる君:ネタを書くときとか、笑いってどうやって作るんだっけな…っていうときです。こういう表現や言い回しにするといいんだなって、アイデアの参考にしてます。最近はネタ書いてないんですけど…。石原先生の本は何冊か持っていて、『大人養成講座』がいちばんおもしろいですよ。
「無駄を削ぎ落とす」のがお笑いとスピーチの共通点
――3冊目は作家・原田マハの小説『本日は、お日柄もよく』です。 あばれる君:これを読んだのは最近ですね。スピーチがうまくなるよ、って噂を聞いて。スピーチが上手じゃなかった主人公がスピーチを習って、結婚式なんかで沸くようなスピーチができるようになるっていう場面があるんです。それが芸人の自分の姿とかぶって、良かったです。ネタも人前で見せることでどんどん良くなるじゃないですか。だから主人公や登場人物にすごく共感できました。 ――スピーチとお笑いに共通点があるとは。 あばれる君:無駄を削ぎ落とすっていう意味では共通点があると思います。ストレートな言い回しをするとか。 ――人から勧められて読むことは多いほうですか? あばれる君:普段はほとんどないですね。自分で選んで買うことが多いので。この本に関しては人からおすすめされて…。あ!そうだ!おすすめされて買おうと思って、家に帰ったらもう本棚にあったんですよ!ゆかちゃんが買っていたんです。偶然ってすげえなってゆかちゃんと話していました。「あの本おもしろいよ」とか「この本はちょっと読めなかった」みたいにゆかちゃんと本のことを話すときもありますね。 ――人前で見せないとネタが育たないと思うと、披露する場が少ない新人さんは本当に苦労しそうですね。 あばれる君:そうなんですよ。ロケで忙しくなると、ますますネタができなくなるんです。で、次の日もまたロケ番組がやってくるっていう。僕も大変でした。忙しくて。今はやっと地に足が着いてきた感じですね。軸が太くなってきたというか。これも、家族のおかげです!
取材・文=吉田あき、撮影=金澤正平