「さわやかイレブン」池田高の4年前に「元祖」がいた!? たった一度の甲子園、宿舎の大浴場で遭遇した国民的スーパースター
「生きとる間にもう一回」
筑紫中央が出場した4年後の選抜大会では、11人で準優勝した池田の「さわやかイレブン」が話題をさらった。「さわやかイレブンって、俺たちが初代なのになあ」「ま、池田は準優勝やし、こっちは1回戦負けやけん」。70歳を超えた渡辺さんら当時の筑紫中央ナインが集まると、笑いながらの思い出話で酒席が大いに盛り上がるという。 甲子園にはあの春を最後に足を運んでいない。夏の福岡大会では母校の応援に何度か訪れた。新型コロナウイルス禍以前は夏前にOBが焼き肉で激励するのが恒例行事で、孫ほど年の離れた後輩に「どうしたら甲子園に行けるんですか?」とよく聞かれた。渡辺さんの答えは捕手らしく「ゼロで抑えたら、相手はたいがい諦めるぞ」。選抜切符を大きく引き寄せた九州大会の準決勝では実際に零封勝ちしているから、説得力を持つ。 100年の歴史を持つ「センバツ」の空気に当事者として触れた渡辺さんはつぶやいた。「生きとる間にもう一回なあ…。もし、2度目の出場がかなったら、あの石碑に文字が入るんやろうなあ」。胸に緑の「CHIKUSHI」が躍るユニホームが早春の甲子園を駆けてから54年―。「もう一回」を待ち望む伝説的なOBのひと言は重みを持って、響いた。 (西口憲一)
西日本新聞社