社員が「適応障害」になったとき企業が取るべき対応や復帰のサポート【専門医解説】
適応障害の社員への対応
編集部: 適応障害と診断されたら、会社へ伝えるべきでしょうか? 岩谷先生: 適応障害がひどくなると会社へ行けなくなるなど、仕事にも支障が及んできます。そのため、適応障害と診断され、仕事に支障が及び始めたら医師に診断書を作成してもらって会社へ報告しましょう。 その後、上司などと相談し、何らかの配慮をしてもらえないか相談してみましょう。 編集部: 一方、企業側は適応障害の社員に対し、どのように対処すれば良いでしょうか? 岩谷先生: 当該社員の仕事のパフォーマンスが低下し、医師により適応障害と診断された場合には、仕事を休ませる必要があるか検討します。企業により休職制度は異なるため、就業規則に応じて休職の手続きを進めます。休職期間は症状にもよりますが、約2~3ヶ月とされています。 編集部: 当該社員の休職中、企業は何をすべきでしょうか? 岩谷先生: その社員が休職した場合は、「病気休業開始及び休業中のケア」「主治医による職場復帰可能の判断」「職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成」「最終的な職場復帰の決定」「職場復帰」という5つのステップを行うよう、厚生労働省より定められています。 これに沿って休職中の社員をサポートすることが必要です。 編集部: ステップが定められているのですね。 岩谷先生: はい。たとえば第1ステップの「病気休業開始及び休業中のケア」では、社員が安心して療養に専念できるよう、傷病手当金などの経済的な保障や不安・悩みの相談先の紹介を行ったり、公的または民間の職場復帰支援サービスを紹介したりすることが必要です。
復職までに企業がすべきこと
編集部: その後は回復状況に応じて復職までのプランを考えるのですね。 岩谷先生: はい。同時にほかの社員が適応障害になるのを予防するため、適切に対処する必要があります。たとえば社員に対してストレスチェックを行い、ストレスの程度が高いと思われる社員には産業医による面談を行います。 編集部: そのほかにはどのような予防法がありますか? 岩谷先生: 産業医による健康相談を行ったり、社内メンタルヘルス相談窓口を設けたり、日頃から社員のストレス環境について情報収集に努めることが大切です。あわせて必要に応じ、社員の家族へ情報を提供し、企業と家族が一緒に対策を講じることもあります。 編集部: 適応障害と診断された社員が復職するにあたって、企業はどのようなことに気をつけなければならないのでしょうか? 岩谷先生: 大切なのは再発を予防することです。そのため、主治医と連携してきちんと回復状況を確認することや、職場復帰の可否について総合的に判断することが必要です。 また、軽作業や定型作業に従事する、出張は制限するというように、少しずつ段階的に復職できるように配慮しましょう。なかには試し出勤の制度を設け、まずは短時間の勤務から開始させる企業もあります。 そのように、社員が無理なく確実にステップを踏んで復職できるよう、体制を整えることが必要です。 編集部: 最後に、読者へのメッセージがあれば。 岩谷先生: 社員が適応障害に陥ったとき、企業に求められるのは、その社員がなぜ自分の環境に適応が困難なのか、適切に分析することです。 それにはSPIなどのツールが非常に有効であり、そうしたテストを社員に行わせることで、社員一人ひとりが個別に持っている能力特性を把握することができます。 適応障害を発症した社員が復職するにあたって重要なのは、病気が治ることだけではなく、以前のパフォーマンスを取り戻せることです。以前のパフォーマンスを取り戻すには、本人の特性に適した職場環境を整えることが重要。 そのためにもSPIなどのツールを活用し、一人ひとりの特性をきちんと把握することが必要です。どのようなツールを用いれば良いのか困ったら、社員のメンタルヘルスケアに詳しい専門医に相談することをお勧めします。