帰還困難区域 帰還促進へ住宅取得補助 福島県、新築に一律300万円 補正予算案
福島県は東京電力福島第1原発事故に伴い帰還困難区域が設定された7市町村の避難者に対し、避難前に住んでいた地域に帰還する際の住宅取得費用を補助する。居住率が伸び悩む富岡と大熊、双葉、浪江の4町は全域、南相馬と葛尾、飯舘の3市村は帰還困難区域となった地域に居住していた住民を対象とする。新築は一律300万円、修繕や中古物件の購入などは150万円を上限に費用の半額を支給する。ただし、帰還意欲を高めるには、並行して生活インフラなどを整備する必要があり、住民からはコミュニティー再生に向けた支援強化を求める声が上がっている。 内堀雅雄知事が20日、定例記者会見に臨み、2億2650万円の関連費を盛り込んだ2024(令和6)年度一般会計補正予算案を発表した。 県が避難者の住宅確保に補助金を投じるのは初めて。富岡と大熊、双葉、浪江の4町の場合、住宅の新築先もしくは中古物件立地場所が避難前の居住自治体内であれば対象となる。南相馬と葛尾、飯舘の3市村では、帰還困難区域に指定された地域の住民のみが対象となり、建築エリアなど補助の詳細は今後検討される。
既に富岡、大熊、双葉、浪江の4町が独自支援を実施しており、各町は数十万円~数百万円を支給している。県が補助金を上乗せする。支援対象は約900世帯に上ると見込み、年内にも始める。2030年度末までの事業実施を想定している。 富岡と大熊、双葉、浪江4町の2月末現在の居住率は、2割以下となっている。地域の活力向上には住民の帰還が不可欠と判断し、新たな補助制度を設けた。 さらに県によると、住宅建築費は避難指示が発令された当時から4割ほど高くなっている。被災市町村からは財政支援を求める声が上がっていた。帰還意欲があっても10年以上継続した避難指示の中で住宅の劣化、物価高騰などの実質的な追加費用が生じた点も考慮した。 内堀知事は「物価高騰が要因になって帰還をためらい、悩んでいる方々にとっては後押しになると考えている」と説明した。 ■「インフラの充実必要」 飯舘・長泥行政区の高橋区長 帰還促進に向け、避難者からは住宅の確保支援に加え、地域の環境の充実が欠かせないとの声が上がる。
飯舘村で唯一、帰還困難区域を抱えている長泥行政区の高橋正弘区長(63)=福島市に避難=は「古里に帰りたいと思い続けている住民にとって、ありがたい制度だ」と受け止めた。一方、自身も含め大半の住民は避難先で新居を構えており、どの程度が帰還するかは不透明と指摘。長泥の特定復興再生拠点区域(復興拠点)には集会所はあるが、商業施設や医療機関などはない。「インフラの充実と合わせ、総合的な支援策が必要だろう」と訴えた。