<figure-eye>番外編 熱戦前の街を歩く フィンランド・ヘルシンキ
フィギュアスケート・グランプリ(GP)シリーズの取材でフィンランドの首都ヘルシンキに到着した。デスクから「フィンランド大会をお願い」と告げられてから2カ月。待ちに待った取材機会を前に現地の様子を報告したい。 【写真特集】ヘルシンキの街の様子や会場周辺の写真はこちら 初めて訪れたフィンランド。ムーミンやサウナなど、魅力のある文化は日本でもなじみが深い。 出発地の福岡からは以前、直行便が飛んでいたが、現在は休止中だ。出張予算の範囲内で乗り換えは1度にしたく、韓国・仁川国際空港を経由してヘルシンキに入った。 ロシアのウクライナ侵攻でロシア上空が飛べず、飛行時間も長くなった。その中で楽しみにしていたことがあった。仕事でノルウェーに赴任している友人からのメッセージ。「(北欧では)オーロラが当たり年と言われているから、北極圏回りだったら見られるかもね」 しかし、フィンランドまでは北極圏とゴビ砂漠を回る二つのルートがある。機内の飛行マップを見て肩を落とした。どうやら、ゴビ砂漠回りだったようだ。これは帰りに期待したい。 フィンランドに到着したのは午前6時。日の出は8時過ぎと遅く、空港の外に出ても辺りは真っ暗。気温3度の中、石油ストーブのような暖房の匂いが漂ってきた。雪国・新潟育ちの私としては、この空気に心が躍る。 空港からヘルシンキまでは電車で30分ほど。朝のヘルシンキ駅は閑散としていたが、いくつかのカフェは営業を始めていた。暖色の照明に照らされた駅構内は美しく、思わず見入ってしまった。 ホテルのチェックインまでまだ時間があり、駅でコインロッカーを探して荷物を預けた。スーツケースが入る特大サイズのロッカーも豊富にそろえられている。また、有料トイレを含め、これらは全てクレジットカードで決済できる。アプリ決済できる路線バスなど現金を全く使うことなく、便利だった。 駅を出ると路面電車が目の前を行き交い、街はクリスマスツリーや装飾で彩られていた。この時期、特に夜は街を歩くのが楽しい季節なのだろう。 北欧といえば、インテリアなどデザインはもちろん、色彩豊かな衣服も特徴的だ。街を歩くと、色鮮やかなコートを着た子どもたちに出会った。近くでよく見ると服ではなく、蛍光色のビブスだった。子どもたちと散歩していた保育士に聞くと「安全のため」という。 遠くからでも目立ち、車を運転する人も歩行者を認識しやすい。日本では見かけないが、そのデザインは子どもたちの安全も担っている気がして、北欧デザインの素晴らしさを感じた。 時間があったので会場となるヘルシンキアイスホールに行ってみた。中心部からバスで10分ほどの場所に降りると、曲線の屋根が美しいガラス張りの建物があった。大会を宣伝する大きな看板などは無く、一瞬不安になったが、ガラス張りの壁面に設置された液晶画面にはフィンランド大会を紹介する映像が流れていた。 ヘルシンキ中心部に近いこの場所で、GPシリーズ第5戦が間もなく始まる。日本勢は男女シングルで鍵山優真選手、山本草太選手、友野一希選手、松生理乃選手、吉田陽菜選手、三原舞依選手が出場。ペアは大会直前に「ゆなすみ」こと長岡柚奈選手、森口澄士選手組の出場が急きょ決まり、話題は盛りだくさん。GPファイナルをかけた大事な戦い、遠い北欧で奮闘する選手たちの横顔を余すところなく届けたい。【吉田航太】