国産車初SRSエアバッグ装着はホンダ「レジェンド」! 最上級グレードに322.9万円~で標準装備【今日は何の日?9月2日】
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日9月2日は、ホンダのフラッグシップ「レジェンド」のマイナーチェンジで、国産車初となるSRSエアバッグを装着したモデルが誕生した日だ。これを機に、1990年を迎える頃には高級国産車から一気にSRSエアバックが普及した。 TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/モーターファンイラストレーテッドVol.07、新型レジェンドのすべて■ホンダのフラッグシップ「レジェンド」に国産車初のSRSエアバッグ装着 ホンダ・レジェンドの詳しい記事を見る 1987(昭和62)年9月2日、ホンダは「レジェンド」のマイナーチェンジで国産車初の運転席用SRSエアバッグ装着モデルを設定することを発表(発売は翌9月3日)。最上級グレード「エクスクルーシブ」で標準装備され、他のグレードではオプション設定されて優れた安全性をアピールした。 ホンダのフラッグシップとして登場したレジェンド ホンダ初となる3ナンバーでフラッグシップのレジェンドが誕生したのは1985年。当時、ホンダは中型車以上の開発に実績のあるローバー社(旧・英国のブリティッシュ・レイランド社)と業務提携を結んでおり、レジェンドの開発は共同で行われ、国内だけでなく英国や北米のアキュラブランドのフラッグシップとしても販売された。 高級セダンとしては当時珍しいFFで、Cd値0.32の優れた空力性能を発揮する低いフロントノーズと広い室内空間が特徴の4ドアセダン。パワートレインは、レジェンド用に開発された2.0L&2.5L V6 SOHCエンジンと5速MTおよび4速ATの組み合わせだった。 レジェンドは、それまでの高級セダンとは一味違うスポーティなスタイリングと軽快な走りで人気を獲得したが、当時爆発的に売れていたトヨタの「マークII」や日産自動車「シーマ」に代表される“ハイソカー”に較べると、販売的にはやや見劣りした。 マイナーチェンジでSRSエアバッグ装着モデルを追加 1987年のこの日、レジェントは国産車で初めて運転席にSRSエアバッグシステムを装着し、ABSも搭載するなどして、当時最先端の安全装備を採用したことで大きな注目を集めた。“SRS:Supplemental(補助) Restraint(拘束) System“は、乗員を拘束するシートベルトを補助するという位置付けで、衝突時に膨らんだエアバッグによってドライバーの顔面への衝撃を緩和、シートベルトと併用する事で効果を発揮するシステムである。 SRSエアバッグを、最上級グレード「エクスクルーシブ」に322.9万~413.0万円で標準装備、その他はオプション設定。当時の大卒初任給は、15.2万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で約489万~625万円に相当する。 SRSエアバッグの作動原理 SRSエアバッグの基本的な作動原理は、まず衝突時に車両前方に装着された衝撃検知センサーとECU内に装着された加速度センサーが衝撃を検出。応答が速い衝撃検知センサーは局所的な衝撃でも反応してしまうので、衝突の判定は加速度センサーの情報と合わせて総合的に判断する。 エアバッグの展開が必要と判断した場合には、点火装置で着火してインフレーター(ガス発生装置)を作動させて大量のガスを発生、このガスがステアリングカバーに内蔵されたバッグの中に一気に充満。圧力が急上昇することでエアバッグがカバーを押し破って膨らみ、シートベルトとともにドライバーを保護するのだ。 衝突を検知してから、運転席なら0.02~0.03秒(助手席なら0.03~0.04秒)後にエアバッグ展開が完了する。 エアバッグ普及の先駆者はメルセデス・ベンツ 世界で最初に運転席用SRSエアバッグを実用化したのは、1981年のメルセデス・ベンツのSクラスである。以降、メルセデス・ベンツは、積極的に安全装備の開発に取り組み、運転席用エアバッグに続き、1987年には世界初の助手席用エアバッグをSクラスのセダン/クーペにオプション設定。1992年には、Sクラス/SLクラスに標準装備し、1994年8月からはすべての乗用車モデルに運転席用・助手席用エアバッグを装備した。 日本では、レジェンド以降に1989年にトヨタ「セルシオ」、日産自動車「インフィニティQ45」が標準装備して高級車から普及が進み、1990年代に入ると急速に装着が進み、1997年には新車装着率は9割に達し、その後は運転席だけでなく、装着部位は多岐にわたっている。 ・・・・・・ シートベルトとSRSエアバッグの組み合わせの実用化によって、100万人以上の人命が救われたと言われている。最近は“ぶつからないクルマ”の運転支援技術が普及しているが、シートベルト+SRSエアバッグは“ぶつかっても大丈夫なクルマ“の代表的な技術なのだ。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純