宮城・女川町の出島と本土を結ぶ出島大橋が開通 巡回診療の医師も期待を寄せる
khb東日本放送
宮城県女川町の離島、出島と本土を結ぶ出島大橋が19日午後3時に開通しました。
出島側と本土側で同時にセレモニーが行われ、開通を祝いました。 出島架橋促進期成同盟会須田勘太郎会長「同盟会発足から45年という月日の中、やっとここまでたどり着け感無量でございます」 出島大橋は全長364メートルのアーチ橋で、総事業費は約168億円です。 陸路がつながることで地域活性化に期待が寄せられているほか、女川原発で事故があった際には避難路としても活用されます。 島民「通勤とか買い物とか便利になると思います」「何年と待っていました。大変うれしいです。感無量です。震災前のように島のにぎわいが戻ってくると思いますね」 航空自衛隊松島基地のブルーインパルスが、上空から開通を祝福しました。 須田善明女川町長「本当に大勢の皆さんが力を貸してくれて開通を迎えられたということが、ひしひしと感じているところです。本当に感謝の念です」 19日午後3時に出島大橋が開通し、一般車両の通行が始まりました。 東日本大震災の津波で住宅約350戸が全壊した出島の住民は、全島避難を余儀なくされそのまま本土に残る人も少なくありませんでした。 現在の人口は90人で、出島大橋に島のにぎわい復活がかかっています。 宮城県塩釜市出身の鹿又陸さんは、出島の自然にひかれて2023年8月に移住しました。 休業した民宿を買い取り、橋の開通に合わせて19日にサウナをプレオープンしました。 女川湾と金華山を眺められる高台に建つサウナは、島の間伐材を60本以上使い内部には国内ではここだけというフィンランド製のサウナ用のストーブがあります。 サウナの隣の林には数人が寝られるハンモックがあり、自然の中で「整う」ことができます。 サウナは22日から営業を開始する予定で、民宿を改修して2025年からは宿泊も始めるということです。 鹿又陸さん「本土から近いのに離島感があるので、空気感を橋が架かったとしても大事にしたいと思っている。来た人が非日常的な体験をできる場所にしていきたい」 出島架橋は、1979年に島民が会を立ち上げ橋の建設に向けた機運が高まりました。しかし、巨額な費用が掛かることなどから計画はなかなか進みませんでした。 東日本大震災では、出島も大きな被害を受け島を離れる人も多く人口は大きく減少しました。 島の復興に大きな期待が寄せられ、2015年に橋の建設が決定し2020年には本体工事が始まりました。 2023年11月には最後のパーツとなる橋の中央部分が架けられ、離島と本土がつながり開通の日を迎えました。 出島の医療を支え続けた医師は、東日本大震災後から約12年間にわたって船で出島に通い、島民の健康を守ってきました。 女川町地域医療センターの医師、斎藤充さんは巡回診療のため月に1回、本土から船で20分ほどの出島に通ってきました。 女川町地域医療センター斎藤充センター長「島には医者も看護師も誰もいませんので、少しでも島の方が安心してくれれば良いかなとを考えて行っていました」 出島には震災前に診療所がありましたが、津波で被災し廃止になりました。斎藤さんは震災の翌年から船で島に通い、島民の診察を行ってきました。 女川町地域医療センター斎藤充センター長「海に出ること自体も不安だったりとか、島には来たものの、ひょっとすると津波でも来れば帰れなくなってしまうかもしれないとか、常にどうなるか分からないような不安を抱えながらもこちらに来ていましたんで」 出島大橋の開通に伴い、船での移動はこの日が最後となりました。巡回診療には、斎藤さんの他、看護師ら5人ほどで向かいます。 出島に着くと、車に島民の薬や採血や血圧測定の器具などを乗せ、島民が待つ集会所に移動します。 現在の出島の人口は90人で、斎藤さんは月1回で約20人を診察しています。 斎藤さんは緊急時に対応できるように、船舶免許を取得しました。島民の事を第一に考えてきた斎藤さんには、島民から厚い信頼が寄せられています。 島民「1人1人ちゃんと診てくれるし、ちゃんと分かってる。優しいんだよね。自分で船運転してここに来たこともあるんだよ、先生は」「優しいところ良いね。看護師さんとか先生が優しくないと血圧上がってしまう」 12年余りにわたり島民の健康を守り続けてきた斎藤さんは、出島大橋の開通によって島民がより良い医療を受けられるようになると期待を寄せています。 女川町地域医療センター斎藤充センター長「できる検査も限られていますし、持って来る薬もその都度そこで処方内容を変えられないっていう不自由もありますし。橋が架かって普通に診療所や病院に来てもらえるような環境が整うことが、島の方にとっては一番安心なんじゃないかと思います」 斎藤さんは橋が開通してからも当面は車で島に通い、巡回診療を行うということです。
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