手の平や足の裏に水ぶくれや膿疱が繰り返しできる「掌蹠膿疱症」なりやすい人の特徴は?医師が解説
■掌蹠膿疱症とはどのような病気? 掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは、手の平や足の裏に膿疱が繰り返して慢性的にできる病気のことです。 一般的に、膿というものは細菌感染などによって引き起こされますが、掌蹠膿疱症における膿疱は感染によって生じるものではありません。 掌蹠膿疱症の明確な発症メカニズムはいまだに解明されていませんが、扁桃炎(へんとうえん)や副鼻腔炎(ふくびくうえん)に合併しやすい、あるいは虫歯や歯周病などの体の一部で感染が生じることや喫煙習慣などが掌蹠膿疱症の発症と関連しているといわれています。 掌蹠膿疱症を発症すると、初期段階では小さな水疱を生じて、次第に膿疱に変化したのち、膿疱が乾いてかさぶた(痂皮)になって剥がれ落ちる現象を次々と繰り返します。 重症な場合には、手の平や足の裏の皮膚が厚くなってひび割れを起こすために、強い痛みを伴うこともありますし、時に前胸部などの関節が腫れたり痛んだりする症状が見られることもあります。 〈写真〉手の平や足の裏に水ぶくれや膿疱が繰り返しできる「掌蹠膿疱症」なりやすい人の特徴は?医師が解説 ■掌蹠膿疱症になりやすい人とは 掌蹠膿疱症は、手の平と足の裏に次々と小さな水疱が形成されて、少しずつ膿疱に変化していくのが特徴のひとつです。 膿疱は時間が経つとかさぶたになって皮がむけていき、また別の体の部位で新たな病変が形成されて、病状が悪化すると手の平や足の裏の皮膚が赤くなって厚くなります。 また、掌蹠膿疱症においては、爪にも肥厚や点状陥凹、変形などを引き起こしますし、手の平や足の裏だけでなく脚の脛や膝などに赤い発疹の所見が現れることもあります。 掌蹠膿疱症の原因は現在のところ全ては解明されていませんが、扁桃炎、副鼻腔炎、虫歯、歯周病など一部の慢性的な感染症が発症に関わっていることが知られています。 したがって、扁桃の摘出手術や歯科治療をすると症状が改善することがあります。 それ以外にも、金属アレルギーや喫煙習慣も発症に関わっていると考えられていますし、特定の遺伝子を持つ人は掌蹠膿疱症を発症しやすいとの報告もあります。 扁桃炎や虫歯などを持っている人、あるいは金属アレルギーや喫煙習慣を有している場合に掌蹠膿疱症を発症しやすいと考えられているので、感染性の病気の治療、金属との接触を避ける、禁煙するといった生活習慣の改善を行うことが重要です。 ■掌蹠膿疱症の治療予防策は? 掌蹠膿疱症に対する治療は、原因と考えられる感染部位の治療を行うことです。 また、アレルギーを引き起こす金属を避けることや禁煙などの生活習慣の改善をすることが重要です。 対症療法的に、症状を緩和するためには、ステロイドの外用薬や、内服治療、光線療法などを行います。 皮膚症状には、ステロイドやビタミンDが含まれた外用薬が主に使用されます。 万が一、症状が改善しない場合には、患部に紫外線を照射する光線療法、ビタミンA誘導体や免疫抑制剤などの内服治療を行います。 重症例に対しては、生物学的製剤も使用されるようになってきましたし、特に関節炎を伴う場合には、炎症が進行する前に積極的な治療が必要になることもあります。 掌蹠膿疱症は発症メカニズムが全ては解明されておらず、明確な予防法はないのが現状ですが、掌蹠膿疱症の発症には特定部位の感染、生活習慣が関与していると考えられています。 したがって、掌蹠膿疱症の発症を未然に予防するには、歯周病などの慢性的な感染症が生じた場合は速やかな治療を心がけること、あるいは禁煙するなどの対策を講じることが重要となります。 ■まとめ これまで、掌蹠膿疱症とはどのような病気か、掌蹠膿疱症になりやすい人の特徴や治療予防策などを中心に解説してきました。 「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」とは、手のひらや足のうらに、水ぶくれや膿疱(のうほう)がくり返しできる病気です。 膿疱の中に菌は入っていないため、人に感染することはありません。 掌蹠膿疱症では、手のひらと足のうらに、水疱や膿疱などの病変があらわれます。 手の平や足の裏以外にも、すねや膝、肘、頭などに症状があらわれることがありますし、爪が変形したり、骨や関節が痛んだりすることもあります。 掌蹠膿疱症に対しては、皮膚症状に対する治療など専門的加療が必要になりますので、気になる症状があれば、皮膚科など専門医療機関を受診しましょう。 文/甲斐沼孟 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
甲斐沼 孟