ロングセラーだけに頼らない 老舗刃物メーカー5代目がつくる安心な新商品
千葉県市川市を拠点とするナルビーは、創業120年以上の歴史を持つ老舗刃物メーカーです。ガラス、タイルの汚れ落としやシールはがしに使う業務用スクレーパーの定番ブランドとして清掃業界で広く知られる一方、それだけでは売上目標を達成できないことが課題でした。そこで、5代目・常務取締役の古川昇一郎さん(38)は、一般消費者の認知度を高めるべく、新商品開発を強化。オリジナル商品を次々と生み出しています。 【写真特集】下請けだけじゃない 中小企業の技術がつまった独自製品
ナルビー、業務用スクレーパーの定番ブランド
ナルビーは、1897年(明治30年)に創業者の古川一郎さんの父が古川バリカン・枝切バサミ製作所を開業したのが始まりです。昭和のころには、子どもたちが愛用していた鉛筆削り用のナイフ「ナルビーナイフ」(当時20円)でも知られた企業です。 現在は、スクレーパーや工業用刃物を中心に、プレスから熱処理、刃付け、研磨まで自社で一貫生産を行っています。従業員数は30人です。 ナルビーのロングセラー商品は、ガラスやタイルの汚れを落とす業務用スクレーパーです。ビルメンテナンスやハウスクリーニングなどの清掃業界では定番品として長年支持されており、シリーズ累計100万枚を販売。国内シェア率は約80%を誇ります。 「『これがないと仕事にならない』『清掃業界でナルビーを知らない人はいない』。この2つは、職人さんから実際によくいただく言葉で、とても嬉しく誇りに思っています」
GLAYにあこがれた元バンドマン
古川さんは、元バンドマンという経歴の持ち主です。中学時代にロックバンド「GLAY」に憧れ、バンドを結成したのを機に音楽の道を志します。大学時代から本格的にバンド活動を開始。インディーズでCDを発売し、車で全国のライブハウスを回るなど、精力的に活動を続けていました。 そうしたなか、父から「そろそろ戻ってこないか」と声をかけられます。「いつかは継がなければ」と思っていたという古川さん。子どものころは工場の2階に自宅があり、家業のおかげで自分が育てられたという感謝の思いもあったことから、家業を継ぐ決意をします。 その後、刃物製造に欠かせない熱処理加工の企業で4年間の研鑽を積んだ後、家業に入社します。2015年、29歳のときでした。