25年度も継続的賃上げ必要と企業は認識、人手不足で-日銀支店長会議
(ブルームバーグ): 日本銀行が9日に開いた支店長会議では、人手不足の下で2025年度も賃上げ継続が必要との認識が企業に広がっていることが多く報告された。今月下旬に金融政策決定会合を控える中、賃上げ率の見極めが追加利上げを巡る判断材料の一つとなる。
会議の報告をまとめた「各地域から見た景気の現状」によると、追加利上げの重要な判断材料となる2025年度の賃金設定について「全体としては構造的な人手不足の下、最低賃金の引き上げもあって、継続的な賃上げが必要との認識が幅広い業種・規模の企業に浸透してきているとの報告が多かった」としている。既に賃上げ率の具体的な検討を進めている企業の声も聞かれたという。
一方、現時点では競合他社の動向を見極めており、賃上げ率を固めていないとの企業の声や、中小企業を中心に収益面の厳しさから慎重な姿勢を示す声も引き続き報告された。
植田和男総裁は、賃金と物価の好循環の強まりを確認する上で春闘などの賃上げ動向を重視する姿勢を示しており、中小を含む全国の企業情報が収集できる支店長会議での報告が注目を集めていた。
神山一成理事・大阪支店長は記者会見で、今年の賃上げ率について、まだはっきりしない部分があるものの、相応の数の企業が賃上げの必要性を感じており、「しっかりしたものになりそうだ」と指摘。一部では、賃上げについて中期経営計画に盛り込む企業もあり、今年だけではなく、中長期的な賃上げ方針を打ち出す企業も出ているという。
価格転嫁広がる
企業の価格設定に関しては、人件費の価格転嫁はなお難しいとする企業の声はあるものの、賃上げ原資確保のための転嫁を実施・検討する動きが引き続き広がっているとの報告が多かった。ただ、消費者の節約志向の影響がみられる下で、値上げの抑制や一部商品の値下げ、低価格商品の品ぞろえ強化などの動きも引き続き見られているとの報告があった。
みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストはリポートで、「まだ確信を得るには至っていないものの、日銀は全国レベルで賃上げ・価格転嫁の動きが一段と活発化していると評価し、25年春闘序盤の情勢についても前向きに捉えているように思える」と指摘。ただ、利上げを受け入れる態勢が市場で整っていないとし、こうした環境が1月会合まで続けば3月会合への先送りを検討しそうだとみている。