お笑い界に広まる将棋ブームも…吉本ユーチューブチャンネルは年内1万人未達成なら消滅
将棋ブームはお笑い界にも広がりを見せている。吉本興業では5年ほど前、東大将棋部出身の社員を顧問とし、将棋が好きな芸人たちが集まり活動する「将棋ブ」ができた。その中の有志メンバーが21年から運営しているYouTubeの「よしもと将棋芸人 と金チャンネル」では将棋の面白さを伝える企画を展開している。現在チャンネル登録者数は約4000人。2024年の間に登録者数1万人に到達しなければ消滅してしまうという。小中高の教員免許取得者、棋士の息子、元警視庁爆発物処理班、慶応大お笑いサークル出身…と個性豊かなメンバーに話を聞いた。 ************ 今回取材に応じたメンバーは4人。「ランパンプス」の寺内ゆうき、「さわやかだいちゅき」のふみお、ベストパフォーマンス・ハタ、桐生ザベスト。 見た目からはやや怪しげな雰囲気もあるが、その棋力はアマチュア二段、三段、四段、四段と強豪ぞろい。将棋に対してはまじめに取り組んでいる。将棋が好きな人も、将棋を全く知らない人も楽しめるようなチャンネルを目指しているメンバーを紹介していく。 まずは部長を務める寺内。小中高の教員免許と保育士資格を持ち、棋力はアマ二段。動画内ではMCを担当し、まとめ役を担っているしっかり者。将棋にはまったのは10年ほど前だ。 寺内「楽屋で先輩に将棋指そうって言われたんです。駒の動かし方だけ知ってる程度だったんですけど、僕、その先輩より絶対に頭が良い自信があって。絶対勝てると思ったら、棒銀をやられてなすすべなく負けた。それがすごく悔しくてその日に本屋に行って、将棋の本を買ったのを覚えてます」 好きな棋士には木村一基九段をあげる。 寺内「受け将棋の棋風も好きですし、よく揮ごうで書かれている百折不撓(ひゃくせつふとう)という百回折れても志を曲げないという信念もかっこいい。あと、ABEMAとかチームメートを迎えるときの拍手の仕方がめちゃくちゃおじさんの拍手で(笑い)力強い拍手をされてて、とても人間的にかわいらしい先生だなと思って、大好きです」 アマ三段のふみおは棋士・菊地常夫八段(08年引退、22年死去)の息子である。 ふみお「お母さんのおなかの中で将棋を覚えました(笑い)ようやく指せる!と思いながら生まれてきた感じです。チャンネル内の役割はコネ担当。お父さんの名前を出すと『昔お世話になってたので』っていってくださる棋士の先生もいるので…」 小学5年生の時に両親が離婚し、父とも離ればなれに。18年放送の番組で約15年ぶりの親子の再会。父と将棋を指しながら話をしたことをきっかけに、吉本の将棋部入りを果たした。 ふみお「僕が好きな棋士は今泉健司先生です。NHKの番組を見ていて、人間として荒れたりしてもあきらめずに将棋をやり続けてて、最後編入試験で棋士になられた。棋風も自陣に駒をたくさん打って泥沼流の指し方でたまらなくしびれますね」 全身緑のハタの前職は、警視庁の爆発物処理班。「爆発物処理班はとにかく笑いがなくて」と芸人へ転職した異色の経歴を持つ男の棋力はアマ四段だ。将棋を始めたのは小学1年生の頃。祖父に教わった。 ハタ「祖父がなんか飛車を玉の頭の上に持っていく指し方をずっとしていて、それでぼこぼこにされてたんです。それは当時発明もされていなかったゴキゲン中飛車という戦法でした。それに勝ちたくて、本を買ってもらって、祖父のその戦法にどうしたら勝てるかを考えていくうちに将棋にのめり込んでいきました。なので今でも対中飛車には自信があります」 好きな棋士には武市三郎七段(14年引退)をあげる。 ハタ「一番棋譜並べさせていただいた先生です。筋違い角戦法を勉強していて、何千回と並べていると思います」 最後に、全身黒ずくめでサングラスをかけ、一番怪しげな桐生は慶応大のお笑いサークル出身。見た目と反して子どもが好きだという。高校の時は将棋部に入っていた。 桐生「中学生のときには先生に画用紙もらって盤と駒を作って各クラスに配って将棋を流行らせましたね」 寺内「すごいね。そんな行動力あったんだ」 桐生「はい。僕が最強だったので、勝つための相手を養殖してたって感じですね」 寺内「やめてよ。こわい話じゃん」 桐生「でも最近同窓会で会ったらまだ将棋続けてるやついたんで。将棋普及には貢献できていると思います」 そんな桐生の好きな棋士は菅井竜也八段だ。 桐生「きっかけは羽生先生から王位奪取した時の王位リーグの将棋がめちゃくちゃ強くて。番勝負でも初披露の戦法で勝って、そこでもう惚れ込んじゃって。その時羽生先生がタイトル取られたのが衝撃だったので、ネットがめちゃくちゃ荒れたんですよ。2チャンネルが炎上してたんで一日中張り付いて菅井先生の擁護のためにレスバトルしていました」 楽しく、真剣に。「将棋の普及活動に貢献できればと思っています」と寺内。「本当にもっと将棋がはやって欲しくて。日本だけじゃなくて世界にも。まわりに将棋の話ちゃんとできる人まだまだ少ないんで。さみしいじゃないですか」と桐生。吉本「将棋ブ」がお笑いとのかけ算で将棋の面白さを伝えていく。(瀬戸 花音)
報知新聞社