内田也哉子「群れたい、甘えたいという感情と今も葛藤しています」家族の変化がくれた「ひとりぼっち」というギフト〈後編〉
樹木希林さんと内田裕也さんという型破りな夫婦の一人娘に生まれ、一般的な家族団欒を知らずに育ったという内田也哉子さん。2018年9月に母親を亡くし、その半年後に父親を失ってからは、突然の出来事に戸惑い、心にぽっかりと穴が空いたような状態が続いていたようです。その空白を埋めるために始めたのは、さまざまな心模様を持つ人と出会うこと。新刊のエッセイ集『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』には、15人の特別なゲストとの対話が収録されています。 5年前から始まった旅路を経て、心の空白にどんな変化があったのか? 内田さんが憧れる面白い大人とは? インタビュー後編は、ゲストとの対話を通して内田さんの胸に残ったことに迫ります。 内田也哉子 1976年東京都生まれ。樹木希林、内田裕也の一人娘として生まれ、19歳で本木雅弘と結婚する。エッセイ執筆を中心に、翻訳、作詞、ナレーションのほか音楽ユニットsighboatでも活動。三児の母。著書に『新装版 ペーパームービー』、『会見記』、『BROOCH』、『なんで家族を続けるの?』(中野信子との共著)、翻訳絵本に『たいせつなこと』、『ママン 世界中の母のきもち』など。
初対面の人とも出会わせてもらった、嬉しい驚きに満ちた時間
――新刊エッセイの『BLANK PAGE』には15人のゲストが登場しますが、初対面だった人もいるんですか? 内田也哉子さん(以下、内田):漫画家のヤマザキマリさんは、この機会に初めてお会いした方の一人です。もちろん漫画もエッセイも読んでいて、おこがましい表現になるかもしれませんが、どこか似ている部分があると感じていました。強烈なお母さんに育てられたという共通点もありますし、お互いに若い頃から一人で海外に行った経験もありますし、違う人生を歩んできたはずなのに、こんなに精神的につながることができるのかと。嬉しい驚きに満ちた時間を過ごすことができました。 詩人の伊藤比呂美さんとも初めてお会いしたのですが、詩のイメージから推測すると強烈なリアリストなのかと思いきや、実はすごいロマンチストな人だと感じました。お話ししていると、作品を通して勝手に抱いていたイメージとぜんぜん違う景色が広がっていたんです。私自身が固定観念や先入観に苦しめられてきた経験があるのに、自分こそが色眼鏡で人を見ていた部分もあったなと……戒めにもなりました。 ――単行本の最後に収録されているのは内田さんと同じく芸能一家に生まれたシャルロット・ゲンズブールさんです。国籍を超えて共鳴する部分があったのでしょうか? 内田:パリにお住まいのシャルロットさんとはオンラインでの対話でした。言語も文化も違うけれども、お互いに両親が表に晒される職業で、家庭が調和することなくいびつだったところなど、お話ししていて気持ちが重なる部分がありました。モニター越しの彼女の周りには誰も取り巻きがいなくて、ノーメイクで自然体。それでも凛とした美しさを放っていていることが印象に残りました。こうしてみると、本当に多様な人と出会わせてもらいましたね。自分よりもずっと若い世代とも対話をしてみたかったですが、今回は谷川俊太郎さんが90代、養老孟司さんや窪島誠一郎さんが80代で、人生経験がとんでもなく分厚い先輩方にお会いすることが大きな意味をもたらしてくれたと思います。
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