【西岡徳馬インタビュー】能天気だった下積み時代を振り返る「事務所から前借りしたり、いろんな人のヒモをやったり…」
弟に言われた忘れられない言葉
自立できたのは、40歳を過ぎてからだった。10年の在籍後、退団を決意したことが契機になった。「たくさんの学びをもらった」が、違う劇団の人たちとも仕事をし、世界を広げたい。思い始めると発火した炎は止められなかった。 「杉村さんが『あの子はやめさせちゃだめ』と言ってると聞きましたけど……ね」 なぜだろう、この人は多くの先達の目に留まり、才を見抜かれ、愛されてきた。「戌年だからじゃないの、わんわんわん、って懐くというか」と、ジョークを飛ばすが、取材中もいかにも気さくで垣根がなく、それでいて俳優としての確固たる〝芯”を感じさせる人だった。 「やめるとき、俳優の積立金の戻しがあるんですよ。ただ円満退座しないと100%もらえない。で、嘘をついた。そのころ父が亡くなったので、印刷会社を継ぐことになった、俳優やめますと。おまえが俳優をやめられるはずがない、印刷所なんてやれるわけがないだろう(笑)、とか言われましたが、なんとか80%はもらえました」 だが退団後も、俳優としての評価は高かったものの、さほど変わらぬ日々が続いた。 「あのころ、弟に言われた忘れられない言葉があるんです。『兄貴よ、いつまで食えないことをやってるんだよ! 俺が金を出してやるから、喫茶店でもやれよ』って。俺は烈火のごとく怒って、ばかやろう、俺はいいものを作ってんだ、金のためにやってるんじゃねえ、なんて豪語した。けど言われた通りなんですよ、現実、お金がなければ、人間、食べていけないんだから」 その後しばらくして、人生を揺るがす大きな転機が訪れる。 ) 【プロフィール】 西岡徳馬(にしおか・とくま)[徳は旧字体が正式表記]/1946年、神奈川県横浜市出身。文学座を経て、ドラマ、映画、舞台で活躍する。代表的な映像作品に『極道の妻たち』シリーズ、『浅見光彦シリーズ』『上品ドライバー』『過保護のカホコ』『緑川警部シリーズ』ほか。初の自伝『未完成』(幻冬舎)が発売中。3人の子女と孫が6人いる。 取材・文/水田静子 ※女性セブン2025年1月1日号
【関連記事】
- 《独占告白》堀ちえみ(57)舌がん完治で音楽活動再開 “Re‐Born”の2024年を支えてくれたのは「夫と7人の子供たち」
- 《豊川悦司&藤井フミヤが対談》同時代を生きてきた2人、出会いは目黒の居酒屋「今年はハリソンで時の人」「パイセンは一枚看板」
- 《ひろみちお兄さん闘病記1》「酒もタバコもしないのに…」下半身麻痺で死を覚悟「支えた家族の言葉」
- 川上麻衣子が「男女の友情は成立する」と確信した志村けんとの関係を語る 一時は同じマンションに住みお互いの家を行き来、番組収録をかねて旅行も
- 「当時売れなかったからこそ、今ではお互いを応援できる」森尾由美、“不作の83年組”が40代になって一気に距離が縮まった理由を語る