生きづらい時代に勇気を ── ジャーナリスト・はに丸王子の挑戦
いまこの日本に「生きづらさ」が覆っている。この25年は、バブル崩壊以降の「失われた20年」と重なり、就職氷河期と呼ばれた就職難や世代間格差を経験している。私たちは、この生きづらい世の中やそれを伝えるニュースとどう関わっていけばいいのだろうか? 8月13日にNHKで放映される「はに丸ジャーナル」は、「はに丸王子」という強烈な人気キャラクターを武器に、ニュースバラエティーとして、この社会問題に挑戦する。
池上さんとは違う切り口で時事に迫る
はに丸王子は、1983年から89年にかけてNHK教育テレビで放映された幼児向け番組「おーい!はに丸」に登場する埴輪(はにわ)のキャラクターだ。いまの30代には特に馴染みがあるだろう。そのはに丸くんが、放送終了から25年ぶりに特番「はに丸ジャーナル」で復活する。はに丸くんは、南海キャンディーズの山ちゃんこと山里亮太さん、女優の豊田エリーさん、ジャーナリストの鳥越俊太郎さんとともに、時事問題に鋭く切り込んでいく。 時事問題の疑問に答えてくれるテレビ番組としては、ジャーナリスト池上彰さんのニュース解説に定評がある。池上彰さんの解説は、経済や国際問題の背景を高校の社会科のレベルから解きほぐすことで、「そうだったのか!」と視聴者の疑問に答えてくれる。これに対し「はに丸ジャーナル」は、日常的な生活について根源的な質問で切り込み、この世の中の意味について、そもそもから考えさせてくれるというアプローチをとる。 今回の「はに丸ジャーナル」が扱うテーマの一つが「スマートフォン」だ。 番組放映中の1985年に登場した携帯電話が「ショルダーホン」。ゴルフ場に行く社長さんくらいしか持っていなかった大きな“肩掛け携帯電話”は、どんどん進化して、いまや中高生の片手に収まり、動画や地図まで見られるようになった。それを、四半世紀ぶりに復活したはに丸くんが目にすると、どう反応するのだろう?
キャラクターはゆるいが、骨は太い
「25年で電話はこれだけ変わった。なら人間はどれだけ変わったのでしょうか?」と問題を提起するのはディレクターの城(たち)秀樹さん(35)だ。城さんは、入局来、「NHKスペシャル」や「NHKx日テレ60番勝負」の制作を手がけ、今は爆笑問題の「探検バクモン」を担当している。はに丸というキャラクターはゆるいが、番組の骨は太い。 城さんはこう話す。「私たちの世代はかつてロスジェネと言われました。今日より明日がよくなる保証はなく、親のように裕福に生きられるという希望もない。あきらめを持つ30歳から40歳に勇気を与えたいのです」。 はに丸くんが寝ている間、日本のあらゆることが変わった。中国は日本をGDPで抜いた。非正規雇用の労働者は1900万人を超えた。バブルの最盛期を知っているはに丸くんと、生きていくのに精一杯のはに丸くんのお友だちがいる。 「こんな時代に誰が助けてくれるだろう?」と考えた時に、はに丸くんがいた。はに丸くんは、子どもと一緒に言葉を学ぶために生まれてきたキャラクター、質問をし続けるキャラクターだ。 「自分が子どもだったころ、やはり『おーい!はに丸』を見ていた。一緒に勉強してくれたはに丸が、今ここにいたら助かるだろうと。いわば大人の教育テレビなのです」。