【バスケ】3季連続ファイナル進出の琉球ゴールデンキングス “原点回帰”と桶谷大HCの「信念」がCSでの成長要因に
3戦とも12人全員を起用 “Xファクター”を生む要因に
CSに入ってから選手たちの共通認識が高まり、チーム力が向上していることについて、第3戦で3P3本を含む11得点の活躍を見せた牧隼利は「ここまで来たら気持ちの部分が大きくて、CSを通して団結する力が増してきていると感じています」と手応えを語る。CSは敗退すればその時点でシーズンが終わるという危機感もあるため、メンタル面が影響していることは間違いない。 さらに、桶谷HCの選手の起用法にも団結力を高める要因がある。一つ一つのプレーの重要度が増すCSにおいては、主力のみでローテーションし、数人は出場時間が無いというチームも多い。しかし、このシリーズにおいて、桶谷氏は3試合ともベンチに入った12人全員を起用した。 もちろん今村やローのコンディションが万全ではなかったこともベンチスタートのメンバーがより出場時間を得ることにつながったとは思うが、それでも渡邉飛勇や荒川颯、田代直希は10分未満の出場でもディフェンスやリバウンド、ゲームを落ち着かせることなど、短い時間の中でそれぞれの役割をしっかりとこなしていた印象だ。 多くの選手を起用する理由を問われた桶谷氏は「プレーの質」の維持を理由に挙げる。 「出場時間が30分を超えてくるとパフォーマンスが落ちると思っています。もちろんファウルトラブルなどで30分以上出ないといけなくなる選手もいますが、マッチアップを見ながら『いま休める』というタイミングではなるべく下げるようにしています。やっぱり勝負どころや流れが悪い時にコートに置きたい選手はいるので」 実際、この3試合で出場時間が30分を超えたのは第1戦のローと第2戦の岸本のみ。最終戦までもつれれば3~4日で3試合をこなし、それが毎週続くCSにおいて、プレーの質を維持するために出場時間をなるべくシェアできることに越したことはない。また、この起用法は普段から「選手が成長する余白があるチーム」を掲げる桶谷氏の信念に基づいたものでもある。 「やっぱり試合に出た方がみんな成長するんですよね。僕らが戦術とかスキルを教えたりするよりも、試合を経験をさせることが一番成長につながる。試合での一つのミスの経験から『なにくそ」と思って練習に取り組めますし。流れがいい時にしか使うことができない選手もいますが、自分の中では一つの信念を持ってやっているので、使える時には使うようにしています」 全員がコートで一緒に戦っている実感を持てているからこそ「チームとして一体感があるし、考えていることがセイムページ(同じ方向を向いている状態)です」とも言う。各選手が迷いなくプレーできているため、第2戦での小野寺や第3戦での牧の連続3Pなど、予想外の活躍をする“Xファクター”も試合ごとに生まれてる。指揮官が続ける。 「アルバルク東京とのクォーターファイナルではXファクターが出てくるのがなかなか難しい状況だったのですが、千葉J戦では小野寺と牧が出てきて、松脇も3Pを決められました。チームにとってはかなりプラスになるし、雰囲気が良くなりました。やっと役者が揃ってきた。ファイナルで、また誰かがヒーローになる要素が出てきたと思います」 昨シーズンもCSでセカンドユニットが躍動し、選手層の厚さが初優勝を飾る要因の一つになったが、今季もシーズン最終盤のこの局面においてその傾向が見て取れる。上昇気流に乗り、25日に横浜アリーナで開幕する広島ドラゴンフライズとの頂上決戦へ。クラブ初の2連覇に向け、陣容は整った。
長嶺 真輝