「光る君へ」脚本・大石静、“ラブストーリー大河”は予想外の反響 「吉高さんと柄本さんがステキ過ぎて…」
「まひろはとても気難しくて、内向的で、時に棘のある人物です。こんなヒロインで大丈夫? と思うくらいの台本なんですが、吉高さんの気難しい顔がとても魅力的なので助けられました。他の作品で見せている明るい笑顔やけなげな姿も魅力的ですが、それとは全然違う顔が今回は見られたと思います。女優として何段階も成長され、突き抜けた感じがしますね。まひろの役を出来る女優は、吉高由里子しかいなかったと、心から思います」
まひろと道長について「台本を超えた」と感じたシーンも多々あるといい、廃邸で二人が初めて結ばれた第10回、悲田院で倒れたまひろを道長が徹夜で看病する第16回、そしてまひろが病に倒れた道長を見舞いに宇治を訪れる第42回などを挙げる大石。第42回では、まひろと道長が幼少期に初めて出会った川辺を思わせる風景のなか、死を選ぶのか、それとも生きるのか、切実な言葉を交わす。
なかでも視聴者を驚かせたのが、7月14日放送・第27回のまひろが道長の子を産むドラマオリジナルの展開。その意図について、大石はこう語る。 「紫式部の書いた『源氏物語』には、“三つの密通の物語”があるのです。主人公の光源氏は義理の母と密通し、後には自分の嫡妻・女三の宮が柏木と密通してしまう。光源氏は己の罪に復讐されたような感じです。さらに次世代では匂宮と浮舟の密通が描かれています。世代を超えた3つの密通は、物語の重要な要素なので、書き手も密通を経験していてもよいのではないかと、チーフ演出の中島さんや制作統括の内田さんと話して決めました」
残すところあと2回となったが、大石はあらためて吉高と柄本について「2人の演技力のすばらしさと、穏やかな人柄のお陰で、現場がいつもいい雰囲気で……撮影が長時間に及ぶことがあっても殺伐とすることはありませんでした。本当にいいチームだったと思います」 と絶賛。
9月末に脱稿し、伸び伸びとしているかと思いきや、取材時(10月下旬)には「ちょっとつまんなくなっちゃった気分です」とボヤいていた大石。「わたしは高度経済成長期に育った子供で、シャカリキに働くことが美徳だと頭に染み込んでいるんですよね。苦しかったですけど、やっぱり1つの目標に向かって必死で走り続けている時が素敵なんです。書き終えてから3日ぐらいは“これで睡眠がとれる!”とだらだらしていたんですけど、全然幸せじゃなくて」と相変わらずアグレッシブで、すでに来年の新作ドラマの準備にとりかかっていると話していた。(編集部・石井百合子)