【大学選手権】早大・伊藤樹「エースとしての仕事できた」10回完封 小宮山監督全国初勝利「学生喜んでプレー」
◆報知新聞社後援 第73回全日本大学野球選手権▽2回戦 早大1―0大商大=延長10回タイブレーク=(11日・東京ドーム) 【トーナメント表】今秋のドラフト注目選手も出場 早大(東京六大学)が延長10回タイブレークの末、大商大(関西六大学)に1―0で勝利し、初戦突破した。エース右腕・伊藤樹(3年)が10イニングを4安打に抑え、完封勝ち。全国大会初采配となる小宮山悟監督(58)に白星を贈った。 * * * 小学生の頃から憧れていたスコアボードに、伊藤が10個の「0」を並べた。「秋田で育ったので、テレビで見るのは東京ドームの巨人戦でした。初めての登板で完封できて、とてもうれしい」。表情には、自然と笑みが浮かんだ。 両校無得点のまま、延長タイブレークに突入。早大は10回に8番・梅村大和の犠飛で1点を挙げた。勝ちにはゼロに封じるしかない。その裏2死二、三塁。一打出れば逆転サヨナラの場面で、代打・新野翔大を左飛に打ち取ると、軽く両手を広げ、腰のあたりで2度ガッツポーズを作った。「10回に点を取られていたら『まだまだだな』というところはありましたが、ゼロに抑えられた。エースとしての仕事はできたと思います」。3年で早大のエースナンバー「11」を背負うプライドがにじんだ。魂の118球だった。 大学で初となる全国大会のマウンド。勝負の厳しさを学んだのも、15歳で立った全国の舞台だった。仙台育英1年だった19年夏の甲子園準々決勝・星稜戦。先発を任されたが、満塁弾を被弾するなど2回途中を5失点で敗戦投手になった。試合後は人目もはばからず嗚咽(おえつ)した。「先輩たちに申し訳ない」と涙を流し、目の色を変えて鍛錬に取り組んだ。あれから5年。ピンチにも崩れない、強い心身で抑えきった。 激闘を制し、早大の大学選手権初戦の成績は無傷の15連勝に。14連勝で並んでいた中京大、駒大を抜いて全国最多となった。「コロナ禍のなか行われた2020年春(のリーグ戦)にタイブレークで2敗しているので、嫌な感じがよぎりました。勝ててよかったです」と、小宮山監督は安どの笑みを見せた。頼れる右腕が早大の歴史に新たな記録をもたらし、15年以来の日本一へ、一つ階段を上がった。(浜木 俊介) ◆小宮山監督、全国1勝 小宮山監督は、東京Dでの初采配を勝利で飾った。ロッテ、横浜の投手としてマウンドに上がった時は、通算7勝15敗で勝率3割1分8厘、防御率3.94。“鬼門”とも言える舞台だったが、負けたら終わりのトーナメントで、しぶとく初戦を突破した。 「ジャイアンツのホームグラウンド。学生たちは、小さい頃からドームで野球をすることを夢見ていたんでしょう。喜んでプレーしていたようで、よかったです」。現役引退から15年。チームを率いる監督に立場が変わり、選手への親心をのぞかせた。 勝利のため、細心の注意を払う采配も見せた。1点リードの10回裏2死二、三塁。指名打者を解除し、DHの松江一輝を左翼の守備に就かせた。「守りがうまい選手に代えるのは当然でしょう」。大商大・新野の力のない飛球は、松江のグラブにしっかりと収まった。 ◆伊藤 樹(いとう・たつき) ★生まれとサイズ 2003年8月24日、秋田・美郷町生まれ。20歳。176センチ、78キロ。右投右打。50メートル6秒4。遠投110メートル ★球歴 仙南東小2年で野球を始め、宮城・秀光中では全国大会準V。仙台育英では甲子園に1年夏、2年夏の交流試合、3年春に出場。1年夏、3年春に8強。早大では1年春から登板。3年春には胴上げ投手に。リーグ戦通算38試合に登板し、7勝2敗、防御率1・71 ★好物 出身地の美郷町ラベンダー園の「ラベンダーソフト」 ◆初戦に負けない早大 早大は大学選手権で無傷の初戦15連勝。初出場からでは14連勝で並んでいた中京大、駒大を抜いて全国最多となった。明治神宮大会も無傷の初戦12連勝中で、春秋の全国大会で初戦27連勝と不敗神話を継続中。大学選手権自体も07年V、12年V、15年Vに続いて13連勝となり、こちらは青学大の19連勝、法大の14連勝に次いで明大と並ぶ3位タイとなり、継続中では最長となる。
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