絶望的政治不信の果てに、スリランカの人々の悲しい選択肢
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釣り具問屋の老主人の嘆き
11月14日。コロンボ港近くの問屋街の釣り具問屋の老主人。実務は息子に任せて半分隠居している80歳。店先でミルクティーをご馳走になりながら世間話をしているうちに政治・経済の話に。老主人によるとスリランカが独立してから1960年代まではスリランカはアジアでは日本に次ぐ豊かな国家であったという。 当時はシンガポール、マレーシア、タイよりも豊かだった。第二次大戦の戦禍を受けず英国人から引き継いだプランテーションから紅茶・ゴム・ココナツ・木材などを輸出して外貨を稼ぎ、他方で米作や漁業により食糧も自給できていたので経済は安定。ちなみにスリランカがかつてアジアで経済的に上位にあったことはスリランカの人々の共通認識のようだ。 その後、1980年代から自治・独立を求めるスリランカ北東部のタミル人による武装集団“タミル・イーラム解放の虎”による内乱が長く続いた。内乱と並行して国家経済をダメにしてきたのは歴代政権による汚職と国富の横領という。スリランカでは二大政党の国民党と自由党により政治が握られてきたが、いずれの政権でも汚職構造は変わらなかったという。 2009年に内乱が終結したが、経済再建を急ぐ政府は中国に依存して大規模プロジェクトを推進。裏では政治家は中国から莫大な賄賂を受け取り海外の銀行口座に蓄財。中国からの借金でスリランカは中国の属国になりつつある。ウガンダなどアフリカ諸国の二の舞になると老主人は憂いた。
断固とした措置で内乱を終結させた英雄は経済破綻と巨大汚職で国外逃亡
アヌラーダプラの民宿オーナー一家の青年によると“タミル・イーラム解放の虎”(ITTE)はテロ集団であったが、歴代政府は妥協したり話し合いで解決しようとして内乱を長引かせてきたと批判。歴代政権は何度もITTEと停戦合意したが、そのたびに裏切られた。マヒンダ・ラージャパクサ大統領(自由党)は徹底した掃討作戦で2009年に内乱を終わらせ平和をもたらしたと青年は評価した。 他方でラージャパクサ一族は、2005年から20年近く政権を握り経済再建策として中国支援による大規模プロジェクトを推進。結果的に“中国の債務の罠”に陥り、2022年4月債務不履行となり経済破綻。さらに一族が中国から莫大な賄賂を受け取ったと糾弾する反政府デモの結果、同年7月に当時のゴタバヤ・ラージャパクサ大統領(自由党)が国外逃亡。 青年によると、当時首相で臨時に大統領職を引き継いだ現在のウイクラマシンハ大統領(国民党)は、中国と距離を置こうとしているが無理だろうと国民は見抜いているという。