トランプ氏の1期目、実際には強制送還が減っていた理由
意図せぬ結果
ビアー氏の研究から、トランプ氏による1期目の強硬な手法はいくつかの意図せぬ結果をもたらしたことが分かった。 たとえば犯罪歴のある人々の退去を優先する方針はとられなくなった。トランプ氏は摘発の網を広げ、公共の安全の脅威と見なす人々を重点的に取り締まるというよりは、違法に入国した人々全員に対する摘発を優先した。これが同氏によって物議を醸した家族を引き離す措置につながった。 ビアー氏の主張によれば、犯罪歴があると見られる人々の拘束に注力するのではなく、亡命申請者で収容施設を一杯にしたため、トランプ政権は結局のところ犯罪歴を持つより多くの人間の入国を許すことになったという。 別の研究で、ビアー氏はトランプ氏の任期中に国境を違法に越えた人々の拘束が増えた点にも注目。その一方で強制送還の数は実質的に伸びなかったことを明らかにした。
フル稼働
トランプ氏が一定の種類の摘発を承認するのは間違いない。公告が出され、摘発の中身には家族が米国にいる人の強制送還も含まれるだろう。ただ現状のシステム自体が非常に逼迫(ひっぱく)しているため、トランプ氏の行動が強制送還の激増にはつながらない可能性がある。 トランプ氏が強制送還を求める1100万人の一部を収容するシステムを作り上げるだけでも、現在連邦ならびに州の刑務所に収容されている受刑者の総数を格段に上回る規模の施設が必要になる。言うまでもなく、それだけの人数を裁判日程の間拘束するのにも相当なコストがかかる。 「数百万人の強制送還を実行するインフラがすぐさま構築できるという考えは、全くの幻想に過ぎない」(ビアー氏)
「家族の問題になる」
オバマ政権でICE局長代理を務めたジョン・サンドウェグ氏は先週CNNの取材に答え、ICEが現在収容センターに所有するベッドの数は約4万1000床だとした。同氏の主な懸念は、トランプ氏が逼迫した司法システムの迂回(うかい)を図り、人々を裁判無しで強制送還しようとすることだという。 サンドウェグ氏の主張するところによれば、大多数の不法移民は米国内で罪を犯したことがなく、その大部分は夫婦のどちらかもしくは子どもが米国籍所持者だという。同氏はそうした不法移民が460万人いると推計する。 「問題を単なる数字のゲームのようなものに置き換えて、『年間100万人強制送還する』と宣言する場合、その対象は犯罪者だけではなくなる」「犯罪者は100万人もいない。家族たちの問題になってくる。そこにこそ本当の懸念がある」(サンドウェグ氏) ◇ 本稿はCNNのザカリー・B・ウルフ記者の分析記事です。