プラットフォームとしての「フリーランス法」と今後の課題
小西 康之(明治大学 法学部 教授) 働き方の多様化が進んでいる現在、フリーランスと呼ばれる人たちも増えています。そんな現状を受け、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称「フリーランス法」が今年11月に施行されることになりました。フリーランスが安心して働ける環境の整備をめざす、フリーランス法の意義を考えます。
◇経済法と労働法のアプローチにより構成されているフリーランス新法 法律上で「特定受託事業者」と表されるフリーランスは、「業務委託の相手方である事業者で、従業員〔週労働20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる者〕を使用しないもの」を指しています。一般的には、「従業員を使用している」「消費者を相手に取引をしている」人が含まれる場合もありますが、彼らはフリーランス新法における「フリーランス」にはあたりません。 既存の労働法は、基本的に雇用関係がある人を保護の対象としてきましたが、働き方が多様化し、対象に当てはまらない人たちも増えてきています。労働基準法は、事業者に使用され、賃金を支払われることが保護を受ける要件になっていて、最低賃金法や労働安全衛生法、労災保険法においても、保護の範囲は同じです(労働組合法の保護はそれよりも広い範囲で認められます)。 フリーランス法は、フリーランスが安心して働ける環境を整備するため、大きく二つの側面について規制しています。一つは、「フリーランスと企業などの発注事業者の間の取引の適正化」、もう一つは「フリーランスの就業環境の整備」です。前者は経済法(独占禁止法や下請法を含む法分野です)、後者は労働法のアプローチにより構成されています。 たとえばフリーランス法に定められた「育児介護等と業務の両立に対する配慮」や「ハラスメント対策に係る体制整備」などは、労働法を所轄する厚生労働省が責任をもって対応するとされています。それに対し、「書面等による取引条件の明示」や「報酬支払期日の設定・期日内の支払」などについては、経済法と同じように、公正取引委員会や中小企業庁が対応することとされています。