プラットフォームとしての「フリーランス法」と今後の課題
◇雇用関係ではないところで働いている人たちを支える仕組みは不可欠 働き方が多様化することによって、労働法の担う役目も変わっていくのでしょうか。従前の働き方も残り続けるでしょうから、労働法の重要性は、引き続きあると思います。 一方で、フリーランスをしながら労働者としても働くことがあると、とくに社会保険などと関係した仕組みも設けていく必要がありそうです。また、他の法律分野での議論も踏まえたうえで、保護を考えていくことも大切です。いずれにしても、働く人を保護すること自体は不可欠なので、多様な働き方に対応する形で検討すべきことも増えていくでしょう。 フリーランス法ができ、さらに細かいガイドラインが出てきているので、フリーランスの人はもちろん、事業者の人も、法律の中身をしっかり押さえたうえで対応していくことが欠かせません。労働力不足が進んでいくなか、これまで以上に働きやすい環境をどうつくっていくかは、ますます重要になっていきます。 働き手が法律で守られていることは前提ですが、今後はそれだけでは充分でないと判断され、取引をしてもらえないこともあり得ます。事業者の対応がSNSなどを通じて外部に公表されやすくなり、これまで以上に厳しい目に晒されるようになるからです。そういったレピュテーションリスクの管理が、今後、より大切になっていきます。単に法律で定められているからだけでなく、適切な環境をつくることの意味を、企業経営者はしっかりと留意しておく必要があるでしょう。 さらに企業だけでなく、日本が、日本で働く人たちを適切に保護できていないと、時代の変化に対応できていない国だと、世界から評価されることにつながりかねません。現実に追いついて対応し、より安心して働けるルールを設け、誰もが活躍できる環境をつくることは、いち働き手や企業にとってだけでなく、国の発展にとっても欠かせないことです。世の中が変わっていくなかで、多様な働き方をする人たちを柔軟に支える仕組みが、今後あらゆる意味でより重要になっていくのではないでしょうか。
小西 康之(明治大学 法学部 教授)