SASUKE出演者が五輪出場も視野?障害物レースで人気低迷脱却なるか
【ベテラン記者コラム】 近代五種の全日本選手権が昨年11月に愛知・安城市で行われ、2028年ロサンゼルス五輪で馬術に代わって採用される障害物レースが初めて国内で実施された。60メートル余りの屋外コースに雲梯、つり輪など8種類の障害物が設置され、選手は2人同時にスタート。スピードに乗って前進し、反り返った壁を登ってゴールすると観客から歓声が上がった。 人気低迷などの打開策として障害物レースの採用が決定。テスト大会ではTBSテレビの人気番組「SASUKE」に似たセットが使用され話題となった。同じ障害物で2度失敗すると得点が与えられないルールの中、SASUKEに出演したことがある俳優、森渉は同種目1位(総合19位)。五輪出場も視野に昨年から本格的に近代五種に挑戦している。 これまでは馬術、フェンシングのエペ、水泳の200メートル自由形での得点を合計し1点を1秒のタイム差に換算、上位からスタートするレーザーランでランと射撃を交互に行い、着順で最終順位を決める形式だった。昨夏のパリ五輪で銀メダルを獲得し、日本勢初の五輪メダリストとなった佐藤大宗は「見ていてワクワクした。観客の皆さんもそう感じたと思うので、どんどん広めたい」と歓迎した。 馬術は馬の輸送、レンタル、餌などで出費がかさみ運営面の課題となっていた。新種目の構想が浮上したのは22年。前年の東京五輪でドイツのコーチが馬をたたいた問題で五輪から除外される懸念があった。コスト面を改善する狙いもあり、ロサンゼルス五輪は障害物レースが導入されることになった。 近代五種は近代五輪の父クーベルタン男爵が発案し、「キング・オブ・スポーツ」と呼ばれ、男子は1912年ストックホルム五輪、女子は2000年シドニー五輪から実施。当初の1日1種目から1日に5種目を行う形式に変え、パリ五輪からは競技時間が従来の3分の1以下の90分に短縮されていた。 日本勢は1960年ローマ五輪で初出場したが世界の壁は厚かった。96年アトランタ五輪からは3大会連続で出場なしなど不振。表彰台は遠い存在だった。2016年リオデジャネイロ五輪で女子の朝長なつ美が12位となったのが過去最高で入賞にも届かなかった。
日本近代五種協会によると、国内の競技者は約50人で自衛隊や警察の関係者が大半。海外勢に比べて競技を始めるのが遅く、佐藤も19歳で挑戦した。種目変更により協会への問い合わせが増えているといい、「知名度が上がるきっかけになりそう」と期待する。自衛隊体育学校に専用の練習施設を整備中で、今年3月に完成予定。ショーアップで人気低迷脱却なるか。