雨の日の死傷事故は晴れの日の4倍!? いま濡れた路面でもきちんと止まる「低燃費タイヤ」が増えている理由とは
キーワードは「シリカ」
タイヤの主成分はゴムです。 ゴムの3大特性として「やわらかい」「大きく変形する」「変形しても元に戻る」ということが挙げられます。
ゴムの分子は、絡まった長い鎖のような状態ですが、ゴムの分子同士がくっついていないと元に戻れず、簡単に破断されてしまいます。輪ゴムがすぐ切れるのと同じ理屈です。 そこでゴムを加熱し、硫黄でゴムの分子同士をくっつけることを「加硫」といい、タイヤの製造でも加硫がおこなわれています。 またゴムはそのままだと非常に弱いため、補強材を入れる必要があります。補強するための材料が「カーボンブラック」です。これは1912年にアメリカのタイヤメーカー、グッドリッチが使ったのが最初といわれています。このカーボンブラックをゴムに配合すると強度は20倍ほど上がり、さらに紫外線にも強くなるといいます。タイヤが黒いのは、このカーボンブラックを配合しているためです。 このカーボンブラックは、ゴム(油)と馴染みやすいといいます。鉛筆で書いた文字(カーボン)を、消しゴムで消すことができるのはこの理屈です。 近年、カーボンブラックに代わる補強材として注目されたのが「シリカ」です。レースタイヤとしては1980年代から使われていたようですが、乗用車用としては1992年に登場したミシュラン「MXGS」に使われたのが最初といわれています。 シリカは、カーボンブラックと似た構造を持つ、ケイ素と酸素で構成された物質(=二酸化ケイ素、SiO2)で「ホワイトカーボン」とも呼ばれています。身近なものとしては、シリコンゴムや歯磨き粉、乾燥剤、珪藻土バスマットなどにも使われています。 カーボンブラックをシリカに置き換えると、ゴムの変形回復が早いという特徴があり、タイヤが転がりやすくなるといいます。タイヤメーカーによると、カーボンブラックのみ配合のゴムに比べ、シリカ配合ゴムは、路面との接触面積は1.23倍、タンジェントデルタ(エネルギーロス)は約27%減、という数値になるそうです。 結果、ゴムにシリカの配合量を増やせば増やすほどウエットブレーキ性能も良くなり、ころがり抵抗も減っていきます。さらにシリカを配合したゴムは、低温でも硬くなりにくいという特性も持っています。