心の中に潜む怪物を描く…ドラマ『モンスター』を魅力的にする闇の引力とは? 第4話考察レビュー
スポーツ特待生という「特別扱い」が生み出した歪み
もうひとつの今回のポイントは、訴訟を起こしたメンバーの中心人物である神宮寺(夏生大湖)とプロ候補のゴールキーパー・武田(本田響矢)だ。ふたりは高校時代からのチームメイトで、同じゴールキーパーというポジション。 切磋琢磨しながら成長している関係だった。ただ、いまのふたりの関係はどこかぎくしゃくしているように見えるが…。実は、武田は怪我をしており、今の練習内容では負担がかかるばかり。 プロ候補としては、ここで怪我が悪化するのはもちろんプラスとは言えない。しかし、武田はスポーツ特待生のため、逆らったり、大学側が不利になる言動は控えなければならない。神宮寺は、武田のために練習内容を変えたい。そのために訴訟を起こした――。 もともとは神宮寺がレギュラーで武田がベンチだった。それが逆転し、神宮寺はさぞやおもしろくないだろう、という周りの勘繰りがあったが、真実は…。 今回はスポーツ特待生という「特別扱い」が生み出した歪み。週刊誌にリークされたことによって世の中が乗っかり、騒ぎが大きくなった。真実が何かもよく分からないままに、誰かを責め、追い詰める。 躍起になって否定したところで、亮子が言っていたように、また別の大きな話題が出てきたらそちらへと移っていくのだ。真実がなんであろうと、どうでもいい。 一方で、神宮寺に対する目線もそうだ。「嫉妬をしていたからあんなことをしたんだ」と何も知らないのに神妙な顔をして、噂する。 嘘も真実も、なんだっていいのだ。騒ぐことができさえすればいい。 人間の暗い部分をカラリと描かれていたが、思わず、我が身を振り返らずにはいられない。 【著者プロフィール:ふくだりょうこ】 大阪生まれ関東育ちのライター。 大学卒業後からライターとして活動、シナリオ制作やエンタメジャンルの記事を中心に執筆。 ドラマと邦画、ハイボールと小説が好き。
ふくだりょうこ