集会の後援申請を自治体が不承認に 「政治的中立」をどう考えるべきか
自治体の施設を利用した市民集会の後援申請が「政治的中立」などを理由に承認されないケースが相次いでいます。そうした動きに対して懸念する声もあります。「政治的中立」とは、どのように考えればよいのでしょうか。
後援申請を断る自治体が相次ぐ
兵庫県神戸市は同市中央区の神戸芸術センターで憲法記念日に開催した「憲法集会」(神戸憲法集会実行委員会主催)の後援依頼を承認しませんでした。また、長野県千曲市も九条の会などの市民有志が、護憲派の学者を招いた講演会(3月30日)を「講演テーマは国論を二分する問題。片方の意見を主張する団体を後援すると、行政の中立性が保てない恐れがある」との理由で断ったとされています。 「後援」と「施設使用」は別なので、自治体から後援が拒否されても、施設が使えないということはありません。また、後援が承認されても資金や人などの実質的な支援を受けられるわけではありません。しかしイベントのチラシやポスターに「後援:○○○市」と明記することができ、「イベント・活動の信頼性が高まる」「自治体の広報誌に掲載できる」「市の公共施設へのチラシの配置ができる」といった広報的なメリットがあります。少しでも集客を増やしたい非営利の集会では、後援の承認・不承認は大きいといえるでしょう。
政治的「目的」から政治的「色彩」に
千葉県千葉市や白井市、松戸市は「政治的中立」を理由に、4月1日付けで集会の後援申請の規定を改定しました。「(規定は)平成5年に制定したもので、近年の市民活動の多様化や申請件数の増加に伴い、現状の規程では対応が難しくなっていたことから、見直しをおこないました」というのが理由です。 白井市が改定した承認基準は図表にある通り「8項目すべてに該当すること」です。改定前は政治的「目的」でしたが、改定し政治的「色彩」とより広範囲で解釈可能な規定に変わりました。仮に憲法や原発、ジェンダーをテーマにした集会となると、「政治的色彩」という点が引っかかるということでしょうか。 「当該規程には、改正前から『後援とは、行事の趣旨に賛同し、その開催を援助することをいう。』と定義されており、政治的という特定の政党・候補者等の支持・反対という事象に限らず、例えば市民の考え方が賛成・反対と大きく分かれるような議論などについても、賛成と反対のどちらか一方を支持するような行事の後援をすることで、後援した一方の考え方を白井市が支持したように市民が受け取る恐れがある場合には、政治的中立の維持はできないものと考え、改正したものです。 具体的には申請内容をみて、個々に判断することになります。しかしながら、集会そのものや団体を否定するものではありません」(総務部総務課行政班) 政治的色彩を有しているかの判断基準は次の「すべてに該当すること」としています。 ◎政治的に賛否等の議論が分かれている特定の政策を支持し、又はこれに反対する主張を行うおそれがないこと。 ◎特定の政治上の主義を支持し、又はこれに反対する主張を行うおそれがないこと。 ※政治上の主義…政治により実現しようとする基本的・一般的な原理・原則。自由主義、 民主主義、資本主義、社会主義、共産主義など。 ◎特定の候補者、政党その他の政治的団体を支持し、又はこれに反対する主張を行うおそれがないこと。