脱炭素に向けた電力の再エネ化やEVの普及は、どのように促進するべきか
◇日本でEVの生産・普及が進まなかった理由の一つに、HVの性能向上も 2050年までのカーボンニュートラル実現に向けて、EVの普及が世界的に推進されています。日本および海外のEV普及率、つまり新車の販売台数におけるEVシェアはどのような状況にあるのでしょうか。2023年のデータで比較してみましょう。 東京電力によると、日本の新車販売台数のうち、普通乗用車のEVは約4万4000台で、シェアは約1.66%にしか過ぎません。軽自動車のEVは約4万7000台で約3.5%です。合計は約9万1000台で前年比の1.5倍となりましたが、普及率は約2.28%と低い水準です。 一方、アメリカは約119万台で、普及率は約7.6%となるものの、CO2排出削減規制が厳しいカリフォルニア州では約21%と、州により大きな差があります。欧州自動車工業会(ACEA)の発表によると、EU全体では約154万台で、普及率は約14.6%に上り、初めてディーゼル車の約13.6%を上回りました。また中国は、中国自動車工業協会(CAAM)によると約669万台で、普及率は約22.2%となります。 なお、北欧の普及率は相当高く、PHV(プラグインハイブリッド自動車)も含まれているため単純比較はできないものの、2022年の時点ですでにノルウェーで約88%、アイスランドで約70%、スウェーデンで約54%です。 EVの歴史を見ると、2008年にアメリカのテスラが富裕層向けのロードスターを発売していますが、量産EVとしては、2009年に三菱が発売した4人乗り軽自動車のアイミーブが世界初です。2010年には日産が5人乗り普通乗用車のリーフが発売し、2019年にEVとして史上初の累計販売台数40万台を達成しています。しかし現在、EV分野で躍進しているのは中国です。脱炭素化の世界的潮流も味方につけ、国を挙げてEVを育成し、新たな自動車市場を席巻しています。日本の自動車産業は危機的状況です。 もともと日本が先頭を切りながら、普及の面でどうしてこれほどまでに遅れてしまったのでしょうか。 EVの価格もさることながら、充電施設の少なさも足止めになっています。集合住宅では自宅で充電できませんし、1回の充電で走れる距離がまだまだ短いことなども買い控えにつながっています。中国などで充電池が発火する事故がたびたび報告されており、安全面での懸念もあります。充電池の劣化が早く中古車価格が大きく下がってしまうことも避けられている要因でしょう。 ネガティブな要素は海外でも同様ですが、補助金などの制度によりカバーしている側面が大きいです。さらに海外の場合、ガソリンの価格が日本と大きく異なっており、EV購入のモチベーションになっています。とくにヨーロッパは、CO2を排出するものに対して課税する炭素税が高く、ガソリン消費の少ない車がより選択しやすくなっています。 一方、日本の場合、複数のメーカーがHV(ハイブリッド自動車)を生産しており、性能向上や価格低下が進んだことも、EVの増産・普及に歯止めをかけている要因でしょう。2022年より、政府がロシアのウクライナ侵攻によって高くなったガソリンの値段を補助していることも、EV普及という面では逆行しています。もちろんHVもCO2の削減にはつながるものの、アメリカ最大の市場であるカリフォルニア州では2035年以降、HVも禁止されるなど、EVが望ましいというのが世界的な論調になってきています。